荒地開発、専門学校校長…ヤ軍に尽くした男たちの社会貢献

[ 2017年5月16日 09:45 ]

現役時代のマーク・テシェイラ氏
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 日本プロ球界と同様、大リーグで現役を退いた人たちのセカンドキャリアは多種多様。最近で異色なのは昨季限りで引退した元ヤンキースの一塁手・マーク・テシェイラ氏(37)だ。スイッチヒッターとして歴代5位の409本塁打を放った強打者が取り組むのは環境問題。非営利の財団を設立し、ジョージア工科大学時代とブレーブス時代の07、08年を過ごしたアトランタで、汚染されたプロクター川の浄化活動に従事している。

 現役時代も人格者で知られたテシェイラ氏は先月中旬、AP通信の取材に「川がきれいになって美しい緑が増え、アトランタの外からも人が訪れてくれれば、こんなに素晴らしいことはない」と語った。自治体とタッグを組んで川を浄化し、周辺に7マイル(約11・3キロ)の遊歩道と緑地公園を造る。この周辺は深刻な貧困問題を抱え、経済発展につなげたい期待もある。緑地の広さは最終的に400エーカー、東京ドーム約33個分にも及ぶ予定の巨大プロジェクト。荒廃した地が秘めた可能性を見いだしている。

 このテシェイラ氏と重なったのが、同じく元ヤ軍の松井秀喜氏の広報として大リーグで10年間活躍した広岡勲氏(50)が踏み出した、江戸川大学総合福祉専門学校校長という新たなキャリアである。既に同大学の社会学部教授、巨人の球団代表付アドバイザー、日本相撲協会の理事補佐・危機管理担当と3つのポストを兼ねる多忙の中、4月1日付で就任した。福祉という「4足目のわらじ」について「ヤ軍で最も学んだのが社会貢献の重要性。福祉に行き着いたのは自然なことでした」と語る。

 ヤ軍は大リーグ球団の中でも特に社会貢献に力を入れており、首脳陣、選手、OBがシーズン中、オフを問わず施設訪問や野球教室などのイベントを行う。加えて広岡氏は、スポーツ紙記者時代から親交の深い巨人・長嶋茂雄終身名誉監督が04年3月に脳こうそくに倒れて以来、幾度となくリハビリに立ち会うなどしてきた。そこで、理学療法士やトレーナー、社会福祉士、介護福祉士たちの仕事の重要性を目の当たりにした経験がある。

 「少子高齢化の時代を迎えた日本にとって、社会の活力を維持するためには、社会の基盤を支える福祉の役割がますます重要になります」と広岡氏。近日中には関東の専門学校で初めて介護ロボットを導入予定で、さらに「これまでの介護のイメージを変えたい」と、さまざまなアイデアを練っているという。方法論は違えど、社会貢献というフィールドで、2人のヤ軍出身者は同じ方向を向いている。(記者コラム・大林 幹雄)

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2017年5月16日のニュース