先天性難聴の大産大・広中 今春リーグ戦初登板で好投 夢は「プロ野球選手」

[ 2017年5月16日 05:45 ]

阪神大学野球 第6節2回戦   大産大15―1追手門大 ( 2017年5月15日    万博 )

先天性難聴の右腕広中(右)と福森主務
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 2回戦2試合があり、2季ぶりの優勝に王手をかけていた関西国際大は延長11回の末、天理大と引き分け。優勝は16日の3回戦以降に持ち越された。大産大は先天性難聴の右腕・広中蒼磨投手(3年=益田東)が今春リーグ戦初登板を果たし、2回無失点の力投。勝ち点獲得に貢献した。

 先天性難聴で両耳がほとんど聞こえない右腕が今春リーグ戦初登板で2回0封と力投した。大産大の3番手で8回からマウンドへ上がった広中は先頭の小野を空振り三振に仕留めるなど最速140キロの直球を軸に追手門大を1安打に封じた。

 ハンディをまったく感じさせない投球だ。小3から野球を始めたが、当初は両親や所属チームの監督から「反対された」という。「プレー中も何も聞こえないです。目で判断するだけなので難しい」。困難な状況にあっても決して諦めなかったのは「野球が好きだから」。奈良県出身で、親元を離れて島根県の益田東へ進学すると、高3夏には背番号1をつけた。

 会話はできず、仲間とは手話や指文字、ジェスチャーで意思疎通を図る。野球だけでなく、大学の授業でもサポートしているのが福森凌主務(3年)だ。立正大淞南出身の福森と広中は14年夏の島根大会2回戦で対戦。当時、打席で直接対決はなかったが、くしくも同じ大学に進学する不思議な縁で結ばれている。福森は「最後の夏に対戦したし、大学でもすぐ仲良くなりました。広中はしっかり単位も取っていますよ」と笑った。

 180人近く部員がいる中で1年秋からリーグ戦に登板。これまで10試合近く登板している。宮崎正志監督も全幅の信頼を寄せる。「彼は感性が鋭い。車の運転もできるし、特別扱いは何もしていません。彼もそういうところを見せない。頑張っている姿はみんなが知っています」。試合翌日、部員に求めるレポートも真っ先に持って来るという。「ハートの強さが強みです。耳は聞こえないけど、野球ができることを示したい」と広中。夢は「プロ野球選手」になることだ。(吉仲 博幸)

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2017年5月16日のニュース