秀岳館・幸地満弾「打たないかんな」で決めた

[ 2017年3月24日 05:30 ]

第89回センバツ高校野球1回戦   秀岳館11―1高田商 ( 2017年3月23日    甲子園 )

<高田商・秀岳館>5回に満塁弾を放った幸地にホームランボールを手渡す鍛治舎監督(左)
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 野球人生初めてのお立ち台。秀岳館の幸地は捕手用レガースを外すのも忘れ、顔を紅潮させ、鼻水をすする音より小さな声でぼそぼそと喜びを表現した。

 「気持ちだけです。みんな打ち出したんで“打たないかんな”と。最高の気分でした」

 壇上で並んだ先発・川端はあまりのサイレントボイスに苦笑いした。

 本人のトークは終始、静かでも、試合ではスタンドの大観衆を興奮の渦に巻き込んだ。

 4―0の5回2死満塁、カウント2―0から高め直球をフルスイングする。左翼ポール際のスタンド中段へグランドスラムを叩き込んだ。7回には左翼線二塁打。野球人生初の満塁弾を含む2安打4打点。3季連続弾のかかる4番・広部主将よりも派手な活躍で甲子園デビューを飾った。

 昨夏まで遊撃手の2番手。鍛治舎監督から「九鬼より肩が強いし送球も速い」と身体能力の高さを買われ、昨秋の新チームから捕手を任された。二塁送球は最速1・8秒。ソフトバンクにドラフト3位で入団した九鬼隆平捕手の後釜だ。

 目標の先輩から「秀岳の鬼」と書かれた帽子を譲り受けた。九鬼が甲子園で打てなかった本塁打、しかも満塁弾で“恩返し”した。バットのスイングスピードはチームでトップ。広部主将が「幸地の長打が日本一へのカギ」と言うほど仲間の信頼を得ている。

 沖縄出身。寮生活では地元の揚げ菓子・サーターアンダギーを同じ沖縄出身の石井卓弥外野手にもらい、故郷を懐かしむ。チーム内では関西出身の選手が「ハイサイ」と声をかけ合うなど沖縄弁も浸透してきた。少しシャイでほんわかムードの“新女房”はまだ全てを出し切ったわけではない。逸材が次々に台頭する秀岳館は底知れない力を秘めている。(井上 満夫)

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2017年3月24日のニュース