「一番努力」で４番抜てき作新・中島　史上２人目サイクル逃す

第８９回センバツ高校野球１回戦   作新学院９―１帝京五 （ 2017年3月23日    甲子園 ）

＜帝京大五・作新学院＞４回１死一塁、作新学院・中島が左線に適時二塁打を放ち走塁中にガッツポーズ
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　１回戦３試合が行われた。昨夏全国優勝の作新学院（栃木）は４番の中島淳内野手（３年）が３安打３打点の活躍。帝京五（愛媛）を９―１で下し、史上５校目の夏春連覇へ好発進した。福井工大福井は仙台育英（宮城）に６―４で逆転勝ち。４１年ぶりの春の勝利を挙げた。昨夏４強で３季連続出場の秀岳館（熊本）は高田商（奈良）に１１―１と圧勝した。

　主力として全国制覇を知るメンバーはいない。昨夏は２桁の背番号をつけていた添田、鈴木の２人が残るだけ。それでも「連覇」の資格者として初戦から力を見せた。

　主役は４番・中島だ。初回に右中間への適時三塁打で先制点を挙げ、３回は中前打、４回には左越えの適時二塁打を放った。昨夏甲子園で３戦連発、決勝の４番を打った先輩・入江から、冬場につきっきりで教わった打撃。「打席では投手を見下ろせ」と助言され、初体験の甲子園で暴れた。「（雰囲気に）のまれそうになったが、入江さんの言葉を思い出して落ち着けた」と笑った。

　「試合後に記録が懸かっていたことを知った。全く気づかなかった」

　そう。６回無死一塁、７回１死満塁での打席にはサイクル安打が懸かった。センバツでは過去、７９年箕島（和歌山）の北野敏史１人だけ。高校通算５本目の本塁打が出れば…の場面だったが、いずれも冷静に球を見極めて四球を選んだ。打撃好調でも慢心はなかった。

　昨秋は３番。関東大会王者として臨んだ明治神宮大会初戦、明徳義塾戦が転機だった。５打数無安打、３三振で試合に敗れた。「自分で言うのも何だけど、大会後は誰よりも野球のことを考えた」。プロから過去の高校球児まで、参考になる連続写真や動画を探し、打撃練習に取り入れた。その姿に小針崇宏監督は「一番努力した」と認め、４番に抜てきした。

　スタンドでは男手一つで育てた父・協一さんが「今日の活躍は本当にびっくり」と目を細めた。「甲子園でホームランを打ちたい」と中島。残した“ごちそう”に次は飛びつく。　（松井　いつき）