オコエに負けん!楽天ドラ3茂木はプロでも飯食える打撃 礒部コーチ高評価

[ 2016年3月2日 11:10 ]

楽天の茂木

 各球団の春季キャンプも続々と打ち上げとなり、これからオープン戦が本格化するプロ野球。アマチュア野球に詳しいライター・菊地高弘氏が、実戦でのアピールが楽しみな若手選手のなかから、楽天のドラフト3位・茂木栄五郎内野手(早大)をピックアップする。

 今、楽天に「侍」のムードを醸し出す、ぜひ注目してほしいルーキーがいる。

 今年の楽天・久米島キャンプは、まさに「オコエ一色」。新聞、テレビ、雑誌のカメラというカメラが、オコエ瑠偉外野手(関東第一高)の一挙手一投足を追いかけた。ただでさえプロの一軍レベルについていくのに戸惑っている状況で、この注目度の高さは18歳の新人にはこたえたことだろう。

 そんなオコエの奮闘に隠れて、密かに首脳陣からの評価を高めていたのが、ドラフト3位ルーキーの茂木栄五郎だ。

「スイングは速いし、打つ形ができている。対応力もあるし、プロでもバッティングが武器になる選手だと思います」(礒部公一コーチ)

 楽天は銀次に代表されるように、左打ちのアベレージタイプの打者が多い。キャンプでのフリー打撃を見ていても、確実性は高いが、今ひとつパンチ力に欠ける左打者が目についた。だが、茂木の打球にはインパクトでの「もうひと押し」がある。まるで刀のような細いバットを振りこなし、171センチの小柄な体からは想像もできないようなインパクトの爆発力がある。

 ただ、キャンプ序盤は力みから、思うようなスイングができなかったという。

 「まだ自分の思うような形で打てていないので、どれだけ早く対応できるかですね。一軍で見てもらえるうちに結果を残して、自分のいいところをアピールできたらいいなと思います」

 そう語っていた茂木だが、その後は練習試合などの実戦でも結果を残している。2月25日のソフトバンクとの練習試合では、1番・オコエ、2番・吉持亮汰(大商大)、3番・茂木と、昨秋ドラフトで指名された順番通りの打順でそろって起用され、タイムリーヒットを放った。これからのオープン戦でも、さまざまな想定の上でテストされていくに違いない。

 茂木の打撃に対する考え方は大学時代からユニークだった。大学4年になって急激に飛距離が伸びた茂木にバッティングの考え方について聞くと、こんな答えが返ってきた。

 「インパクトでのボールの見え方を常に同じにすることを考えています」

 つまり、もっともボールに力が伝わるインパクトの形を常に一定にすることを心がけているというのだ。投手にはオーバースローからアンダースローまで、さまざまなタイプの投手がいて、打者の打撃を崩そうとあらゆる工夫をしてくる。だが、茂木は「最後にストライクゾーンにボールが来ることは同じ」と、どっしり構えている。

 この考え方で取り組むようになってから急激に本塁打数を増やし、プロ入りへとつなげた茂木は、プロでも同じように「ボールの見え方」にこだわっていくという。

 「今のところはその考え方を変えずに、どれだけプロのボールに対応できるか。そこを突き詰めてやっていきます」

 ここまで順調にアピールを続けている茂木だが、レギュラー獲得にはまだクリアすべき壁が多い。起用されている二塁には藤田一也、三塁にはウィーラーや現在ケガで離脱しているものの、FA移籍してきた今江敏晃が立ちはだかる。さらに茂木は大学時代から故障が多く、キャンプからの蓄積された疲労も気になるところだ。

 それでも、いずれ近い将来、茂木が楽天打線の軸を担う日がやってくるのではないか。キャンプからの茂木を見ていて、そう予感せずにはいられない。

 ◆菊地高弘(きくちたかひろ) 1982年生まれ、東京都出身。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。プレーヤー視点からの取材をモットーとする。近著に「菊地選手」名義の著書『野球部あるある3』(集英社)がある。

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