右肩手術から復活懸ける松坂の“アニキ” 会って伝えたい言葉とは

[ 2016年2月2日 08:23 ]

ソフトバンク春季キャンプ初日、工藤監督の前で投げ込む松坂

 「もう、私の肩は上がりません」――。07年9月28日。自身の引退セレモニーでそう話したのは、元西武投手コーチの石井貴さん(44)だ。右肩痛に苦しんだ現役生活。そんな石井さんは、右肩手術から復帰を期すソフトバンク・松坂にエールを送る。「本人も分かっていると思うけど、慎重にも慎重を重ねてやってほしい。投げたがりだから、状態がいいと飛ばし過ぎちゃうかも。とにかく焦らず、ね」と。

 肘、肩の痛み。投手にとっては「職業病」といっていいのかもしれない。しかし「肘の場合は、(投げても)痛くないところを見つけて投げられる。でも、肩だけはどうにもこうにもならない」と、石井さんは言う。99、00年に2年連続2桁勝利を挙げたが、03年はわずか6試合の登板で1勝止まり。松坂のように手術も検討した。だが、医師から「手術をするとボール半個、1個分のコントロールがにぶる」と告げられた。04年の中日との日本シリーズで2勝を挙げてMVPに輝いたが、現役の最後まで肩痛に悩まされ続けた。

 「毎日のリハビリには耐えられる。でも、治療しているのに(状態が)前進したり後退したり…。なかなか治らない(心理的な)もどかしさが一番辛かった」

 そんな石井さんのプロ6年目の99年、松坂が西武に入団してきた。親しみを込めて「貴さん」と呼ばれ、文字通りに兄貴分として可愛がった。「ボールの質、馬力…。全てが明らかに(他の投手と)違っていた。圧倒的な力で打者を抑え込んでいた」。18歳で開幕を迎えたルーキーが持つ底なしのポテンシャル。松坂は1年目に16勝を挙げて最多勝、新人王。石井さん、そして日本中の野球ファンの誰もが「平成の怪物」の凄さに驚かされた。

 時が経つのは早い。あれから17年の歳月が流れた。石井さんは野球評論家。35歳となった松坂はレッドソックス、メッツでのプレーを経て、右肩を手術し、ソフトバンク2年目のキャンプを迎えた。2月1日。右腕はいきなり捕手を座らせて50球を投げた。石井さんは9日にも、宮崎のキャンプ地を訪問する予定でいる。直接会って伝えたい言葉は「焦るなよ」。焦らず、じっくり。アニキは、怪物の復活劇を心待ちにしている。(記者コラム=鈴木 勝巳)

続きを表示

2016年2月2日のニュース