【世界陸上】「完敗」を認めた田中希実、表情が穏やかだったワケ「限界を決めなかったことが…」

[ 2025年9月24日 06:30 ]

9月20日、女子5000メートル決勝を終えた田中希実(撮影・木村 揚輔)
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 国立競技場で開催された陸上の第20回世界選手権が21日に閉幕した。

 日本女子中長距離のエース、田中希実(26=ニューバランス)は20日、5000メートル決勝に臨んだ。結果は12位。8位に入賞した前回大会の成績を上回ることはできなかったが、表情は穏やかだった。レース直後、普段から良くも悪くも感情をそのまま表現するアスリートは、すっきりとした面持ちで報道陣に語り始めた。

 「今日は私の実力を試したかった。最後、ヘナヘナになってしまったけど、私の等身大の実力は出せたと思う。タイムとか順位、走り方にしても、全部が私の実力だったと思うので。反省の余地がないというか、本当に完敗した。ああすれば良かった、こうすれば良かったっていうのがないぐらい、力負けをしたと思うので。

 今シーズン、実力をつけても“自分の限界はここまでなんじゃないか”って思うことが凄く多くて…。それが自分の中で気持ち悪かった。自分の中で限界を決めたくない、強くなりたいと思えば思うほどに理屈にとらわれて、逆に走る前からダメだった時のことを考えたり、準備や言い訳を考えてしまったり…。弱い自分を恐れて、その恐れがフタをしていたと思う。

 でも、今日はその恐れに向かっていくことができた。あんな風になるとは自分でも思っていなかったけど、そこが今までとちょっと違うのかなと。今日はもう“メダルを獲ったらどうしよう”とか、それぐらいのことを考えていた。自分の可能性を凄く感じながらスタートラインに立つことができて、最後の1周までそれを感じられたこと。自分の限界を決めなかったことが凄く清々しくて。

 頭の中で自分の限界を決めなかったのに跳ね返されたっていうのは、本当の意味で“実力がまだまだ”だっていうことを身体で思い知った。“これ以上、どう努力したらいいんだろう”みたいな気持ちももちろんあるけど、来年以降、本当の意味で、もっともっと強くなれるように。

 6万人の方々、ほとんどが日本の方々だったと思うんですけど“私は強いけど弱いよっ”っていうところを見せられた。表裏一体の全部を見せられたので、すっきりしているのかなと思います」

 主に海外のレースを転戦してきた今シーズン。国内では敵なしでも、海外の猛者に勝負を挑み、走る前から逃げている自分がいた。心の浮き沈みを繰り返し、弱気な感情にずっと嫌気が差していたが、この日は違った。後方につけ、残り1周では7番手まで順位を上げた。最後は海外勢のラストスパートについていけなかったものの、ゴール後に倒れ込むほど力は出し切った。

 「本当の意味で、いろんな方々とつながるシーズンだった。自分のことを好きになれない、自分のことを好きになるには結果を出さないといけない、それによって過程を認められると思っていた。そうではなくて“とにかくひたむきにやる”っていう、今まで通りの自分に戻るため、東京五輪の前の自分に戻るためのシーズンだったのかなと思います」

 1500メートルは予選敗退、5000メートルは12位。結果はついてこなくても、その過程に胸を張れた。自国開催の世界陸上――。一つの誇りを得て、田中の戦いは幕を閉じた。

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