太陽自動車の1億円契約を可能にした100%新車館「天才ゴルフ少女」須藤弥勒の美談

[ 2023年12月15日 06:30 ]

須藤弥勒と「100%新車館」の八木代表
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 先月、太陽自動車との10年総額1億円のダブル所属契約を結び、12社とのスポンサー料総額が3億6000万円を超えるとされる「天才ゴルフ少女」、須藤弥勒(12=ゴルフ5/太陽自動車)の契約の舞台裏はあまり知られていない。

 22年の規約改定後、アマチュアでも上限なしでスポンサー収入を得ることが可能になり、中でも抜群の存在感とジュニアの国際大会で実績を残していた須藤弥勒(以下、弥勒)のもとに多くのスポンサーが殺到したのは周知の事実である。

 その中でも、早くから支援の手を差し出していたのが5歳の時に自社のCMに出演させていたUHA味覚糖と関東5店舗で新車を扱うディーラーシップを営む「100%新車館」だった。

 100%新車館代表の八木勝之氏は「5歳の時に初めて会った時から、彼女は何かが違うことが明白に分かった。自分の考えを言葉にできるし、人前で話しても臆することなく、しっかりと話せる。相当に頭の良い子だった」という印象を受けたという。

 八木氏はすぐに須藤家に支援を約束。当時、海外遠征やコーチ費などで年間800万以上が必要だった弥勒の実家にコーチの費並びに移動車などを支援。現在6年目のスポンサードに入るが、一度もやめたいと思ったことはないという。

 むしろ、八木は自らの会社の年商が増えるにつれて地元茨城ロボッツや横浜FC、ラグビー女子日本代表、アレックス・ラミレスにスポンサードの手を広げ、縁あるスポーツマンへの協力を惜しまないようにしている。

 弥勒も新車館との出会い後、毎年結果を出し続け、一昨年には史上初めてジュニアメジャー4冠を達成。来年13歳の誕生日を迎えるにあたって、ゴルフ5レディース周辺の日程でJLPGAのツアーデビュー戦の参戦も明言している。

 ただ不思議と思えるのが弥勒の所属先。地元、群馬県の太田市で弥勒の共同所属先として手をあげた「太陽自動車」だが、彼らは年商50億円の新車館と同じ「車の売買」を商いとしている。通常、プロのスポンサードに同業や競合は契約上許されず異例となる。

 父・憲一さんに背景を聞くと「太陽自動車さんからスポンサーのお話しがあり、我々も来年以降、本気で弥勒に勝みなみ選手の持つ、JLPGAでの最年少優勝記録を狙わすのであれば想像できないほどの資金が必要だということがわかりました。宿泊費をはじめとする遠征費はもちろんですが、プロと同等にコースの知識を入れるところまで持っていくと1回や2回、コースを周ったぐらいでは勝負できません。ほとんどのトーナメントが開催されるコースはその地域の名門で平日でも2万5000円はかかり、ジュニアの場合(キャディーとなる)親も帯同しなければならないところも多く、1度回るのに5万円の計算になります。それをJLPGAの上限である年間8試合まで挑戦するとどうしても資金が必要で地元太田から次世代のスーパースターを出すという熱意を持つ太陽自動車からの申し出は本当にありがたかったのですが、新車館の方から許可が下りるかが心配でした」と話す。

 そして、9月下旬に行われた新車館の感謝祭で八木社長と面談で「このようなスポンサーの申し入れがあるのですが…」と話したという。母・みゆきさんは「もし、ずっとお世話になっていた新車館の八木社長から許可が降りなかった場合、太陽自動車の申し入れを断ろう」と決意していたが、八木の返答は以下のものだった。

 「そんなことだったら、心配しなくていい。弥勒ちゃんは日本の宝。その宝を育てるのは、すごい金額のお金がかかる。大切なのはみんなで弥勒ちゃんを育てること。同業者だからダメだとか小さな話ではない」と笑いながら話したという。

 弥勒は「本当に記録に挑めるのはスポンサーをしてくださるみな様のおかげですが、中でも、八木社長の男気が大きいです。感謝と感動で涙ぐんでいた母の姿は忘れません」と話す。

 その2カ月後、弥勒は太陽自動車との10年契約を締結。来年から様々な最年少記録に挑むことが可能な天才少女の大型契約の舞台裏にはこのようなスポンサーとの美談があったのである。

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