沖縄から「神解説」の馬瓜エブリン 涙あふれたスラダン主題歌大合唱「一体になって最高の歴史をつくった」

[ 2023年9月4日 05:20 ]

馬瓜エブリン
Photo By 代表撮影

 バスケットボール男子日本代表が48年ぶりに自力で五輪切符をつかんでから一夜明けた3日、テレビ朝日の中継で解説を務めた東京五輪バスケ女子日本代表の馬瓜エブリン(28)が本紙の取材に応じ、会場の熱気を振り返った。どんなに苦しい展開でも観客の大声援が「選手たちを奮い立たせた」とし「選手とファンが一体でつくった最高の歴史」と称賛した。

 エブリンはフィンランド戦、オーストラリア戦、カボベルデ戦の計3試合で解説を担当。男子代表の歴史的瞬間に立ち会い「興奮してあまり眠れなかった」と笑みを浮かべた。

 大会を通じて最も心を動かされたのは、最大のホームアドバンテージとも言える大歓声が選手たちを鼓舞したこと。解説でも「天井が吹き飛びそう」と口にしたほどの熱気に満ちていた。

 3点シュートが立て続けに決まるたびに声援は増していき、選手が観客をあおってさらに盛り上がる。攻守が切り替わるたびに「ニッポン」「ディフェンス」といったコールが送られた。エブリンは、トム・ホーバス監督が「3本、4本連続でシュートを外してもヘッドダウンしないで」と言ってきたことに触れ「選手は頭で分かっていてもシュートを外し続けると落ち込んでしまう。そんな苦しい時に顔を上げてプレーできたのはファンの声援があったからこそ」とホームのアドバンテージを演出した観客を称賛した。

 自身が女子代表として銀メダルを手にした2021年の東京五輪は新型コロナウイルスの影響で無観客開催だった。「コロナ禍でとても苦しかった合宿が実を結んだという感慨深さがあった」と振り返った上で「今回のW杯中にトムさんと“東京五輪でお客さんが入っていたらどうだったろうね”という話はした」と明かした。

 パリ五輪を決めた試合後、思わず涙があふれた場面があった。それは会場にロックバンド「10―FEET」が歌う映画「スラムダンク」の主題歌「第ゼロ感」が流れた時。客席が一体となってサビのコーラス部分を「オーオオー、オーオー!」と大合唱した。まさに「天井が吹き飛びそう」な瞬間を目の当たりにし「こんな光景を日本で見られてうれしかった」と本場NBAに負けない熱気に感激。「選手とファンの皆さんが一体になって最高の歴史をつくり上げたんだと強く実感することができた」と余韻に浸った。


 ≪SNSで絶賛の声「陰のMVP」≫エブリンの解説は高く評価された。カボベルデ戦で会場の大声援について「天井が吹き飛びそう」と叫んだことについて「実はNBAの実況でよく聞くフレーズですが、あんなに素晴らしい試合をしていたので心の声としてそのまま出た」と明かした。ほかにも富永啓生が3点シュートを狙うと「打っていいんだ、それでこそシューターだ」と背中を押し、終盤の緊迫した展開では「行こうよ、パリ行こうよ」と祈るような思いを吐露。選手やファンの心境を代弁するような言葉が視聴者を感動させたとしてSNSで「陰のMVP」との賛辞も贈られた。

 ≪“魔法の言葉”注目≫「言葉の魔術師」と称されるホーバス監督は、「ビリーブ」と声をかけて選手を鼓舞し続けた。エブリンによると、女子代表監督時代にも金メダルを目指して「ビリーブ」「私は信じています」といった言葉を日々繰り返していた。女子代表を銀メダルに導き、男子代表を48年ぶりに自力での五輪切符に導いた指揮官の“魔法の言葉”にも一段と注目が集まっていきそうだ。

 ◇馬瓜 エブリン(まうり・えぶりん)1995年(平7)6月2日生まれ、愛知県出身の28歳。両親はガーナ出身で、14歳の時に家族で日本国籍を取得した。U―17日本代表にも選ばれ、世界選手権ベスト4。Wリーグで活躍し、昨季1年間の休養を経たのち、今年6月にデンソーに入団し復帰。同月、妹のステファニー(24)はスペインリーグへ移籍。1メートル80。

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