八村に“自分から来い!”ホーバス監督が求めた日の丸の覚悟 スターに頼らないチーム力に自信

[ 2023年9月4日 05:30 ]

東京五輪に出場した八村塁
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 バスケットボール男子W杯でアジア最上位の19位となり、来夏のパリ五輪出場権を獲得した日本代表が順位決定リーグ最終戦から一夜明けた3日、沖縄市役所で会見を開いた。2大会連続8度目の五輪出場。開催国枠でない自力出場は76年モントリオール大会以来48年ぶりの快挙だが、トム・ホーバス監督(56)は伸びしろが無限大であることを強調し、チームの出来をあえて厳しく評価した。

 期待値が大きいから、簡単には褒めない。ホーバス監督は歴史的快挙を成し遂げたチームを「まあまあだね」と評価した。女子日本代表を率いて東京五輪で銀メダルを獲得し「スーパースターはいないけど、スーパーチーム」と絶賛した2年前とは対照的。1年後に本当の勝負が待つだけに「結果を出したけど、もっとできる。天井がどこにあるか分からない。そこは楽しみ。まだ仕事は終わっていない」と視線を上げた。

 9日間で5試合を戦い、3勝2敗。6度目のW杯で初めて勝ち越した。フィンランド戦は最大18点差、ベネズエラ戦は最大15点差を逆転。カボベルデ戦は第3Q終了時18点リードしながら終盤3点差に詰められた。世界的強豪のドイツ、オーストラリアにも後半のスコアは上回っただけに、指揮官は「40分間(自分たちの)バスケを見せたい」と課題を挙げた。3点シュート成功率も目標の40%に届かず、31.3%。激しい守備からの速攻を軸に白星を重ねたが、ゴール下の戦い、外からのシュートともに理想の数字からは遠く、伸びしろは十分にある。

 大会中話題となった指揮官の言葉力はNBAキャリアを優先して欠場した八村についても発揮された。「彼が入ってほしいのは当たり前。でも(一緒に)やらないならこのメンバーでいいチームをつくる。自信はあります」と言い切った。来る者は拒まず、去る者は追わず。今大会も「MVPは全員」と言うように、一人のスターに頼るバスケはしない。パリ五輪で招集できれば大幅な戦力増だが「彼がやりたいんだったら、彼から声をかけたらいい」とあえて突き放した言い方をした。オーストラリア戦で、ファウルを連発した河村に「ふざけんな!」とダイレクトな言葉を投げかけ、カツを入れたように“言葉の魔術師”ならではのメッセージ。八村といえども、日の丸を背負う覚悟を求めた。

 パリの目標については「ゆっくり考えたい。大事なことなので、簡単に決めたくない」と説明。選手、コーチ陣としっかり話し合った上で設定する方針で、この誠実な姿勢が選手からの信頼を得ている理由でもある。パリ五輪開幕まで1年を切ったが、世界一の練習量で、まだまだチームを強くする。

 ≪“言葉の魔術師”ホーバスマジック≫☆小兵2人を選出 身長1メートル72の河村、1メートル67の富樫と小兵カード2人を12人のロースターに入れる世界でも珍しいメンバー構成で勝負。調子の良い方を長時間起用し、日本人の特性を生かしたスピードで相手をかき回した。

 ☆比江島タイム 苦しい時間帯に個人技で状況を打開できる比江島を起用した。27日のフィンランド戦は前半だけで14得点、31日のベネズエラ戦では第4Qだけで17得点と爆発。経験豊富なベテランを切り札にして、会場を巻き込んだ“比江島タイム”を演出した。

 ☆河村覚醒をアシスト 昨年8月の強化試合でシュートの積極性を欠いた河村に激怒。即座にベンチに下げ「シュートを打たないとドライブも生きない」と説教した。これを機に得点意識が上がり、22~23年Bリーグで日本人最多得点。ベネズエラ戦は19得点11アシストをマークし、この2部門ではW杯日本人初のダブルダブルを達成した。

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