柔道パリ五輪代表 最速内定者を占う 詩は確実、一二三も選ばれるべき

[ 2023年5月16日 08:00 ]

金メダルを手に笑顔の阿部一二三と詩
Photo By スポニチ

 パリ五輪前年の柔道世界選手権が14日に閉幕。今度は全日本柔道連盟が3月に改正した新たな「強化システムに関する規定」に沿って、6月末にも開かれる予定の強化委員会で、誰が最速内定を得るかに焦点が移る。

 規定の五輪代表選考基準を抜粋すると、「監督と強化コーチが他選手よりも明らかに優位となったと判断した選手がおり、強化委員会において承認された場合は、当該選手を次年度のオリンピック競技大会の代表内定選手とする」とある。今回の世界選手権で日本の優勝者は男子1人、女子3人。内定要件に明記されているわけではないが、結果を残したこの4人が、最速内定の資格を得たものと考えている。

 では誰が、その栄に浴するか。

 女子52キロ級・阿部詩の内定は確実だ。昨年10月の世界選手権を制し、2カ月後のグランドスラム(GS)東京大会も優勝したことで、その時点で唯一、今年の世界選手権代表入りを決めた。GS東京大会決勝では2番手と目される志々目愛との直接対決に勝ったことも、内定を後押しする。今大会も5試合オール一本勝ちで、無失点、さらに指導もゼロ。文句なく選出されるはずだ。

 3連覇した女子48キロ級の角田夏実も有力視される。3年連続で2人同時派遣というプレッシャーが掛かる中で結果を出し続け、前年大会から内容面でも安定感が格段に増した。2番手の古賀若菜が銅メダルは確保したものの、金と銅だから、その差は広がっている。決勝での直接対決で白黒付ければもっと分かりやすかったが、実現しなかったのは道半ばで敗れた古賀が原因。角田を選ばない理由にはならない。

 女子78キロ超級の素根輝は、昨年12月のGS東京大会で冨田若春、瀬川麻優を直接対決で破った上で代表に選ばれ、4年ぶりの優勝を果たした。東京五輪を制した実績も踏まえ、最速内定が有力ではないか。女子70キロ級で初優勝した新添左季は、銅メダルにとどまった昨年10月の前回大会からの成長が明らかで、試合内容も充実していた。ただ、今後は世界から首を狙われる立場。女王として挑戦者をはね返すことができるか。その戦いぶりを一度チェックしてからの内定でも良い気がするが、首脳陣はどう考えるだろうか。

 そして注目は男子66キロ級を2連覇した阿部一二三が選ばれるか、否かだ。2年連続でライバルの丸山城志郎を決勝で下したのはご存じの通り。直接対決で優劣を付け、対丸山戦は5連勝となった。勝ち上がりの試合内容を見ても、危なげはなかった。それでも判断を迷わせるのは、2番手である丸山が世界でも2番手の存在であり、阿部一が不在なら五輪で金メダルを獲る力量があるからだろう。

 しかしだからこそ、阿部一にも最速内定を与えるべきと考える。この2年間、最強の2番手に追われるプレッシャーにさらされ、直接対決ではねのけた実績を高く評価すべきだ。早く代表争いの負担をなくし、パリ五輪本番へ集中して調整させてあげるべき。20年12月の五輪代表決定戦、21年の東京五輪と大一番にピークを合わせて結果を残してきた阿部一なら、代表争いから解放されるデメリットよりも、メリットの方が大きいだろう。

 丸山にはあまりに酷な決定になることは承知の上で、私はそう考えている。(記者コラム・阿部 令)

続きを表示

「羽生結弦」特集記事

「テニス」特集記事

2023年5月16日のニュース