山下一貴が日本歴代3位2時間5分51秒 パリ五輪へ新星「世界選手権もMGCもチャレンジしたい」

[ 2023年3月6日 04:56 ]

東京マラソン ( 2023年3月5日    東京都庁前~東京駅前 )

日本人トップでゴールする山下(撮影・西海健太郎)
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 男子は、山下一貴(いちたか、25=三菱重工)が日本歴代3位の2時間5分51秒で日本人トップの7位に入った。終盤に大迫傑(31=ナイキ)との一騎打ちを制して新星誕生を印象づけ、10月のパリ五輪代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」へ弾みをつけた。女子は既にMGC出場権を持つ松田瑞生(27=ダイハツ)が2時間21分44秒で日本人トップの6位に入った。

 いつもは柔和な“ゆるキャラ”の山下も、さすがに歯を食いしばっていた。40キロ過ぎ、前に出ていた前日本記録保持者の大迫を抜き去る。残り200メートル、最終カーブで目に入ったのは「2時間5分30秒」の時計の表示だった。「5分台出せるなと思って頑張った」と苦悶(くもん)の表情でゴール。優勝インタビューで正式タイムを聞くと「おぉ~」とやっと笑みを浮かべ「42キロからの0・195キロ、200メートルがきつかった」と振り返った。

 中盤まで日本記録を超えるハイペースの中でも、落ち着いていた。ペースが落ちた32キロ過ぎに「強い選手と引っ張り合えばタイムが出ると思った」と一気に前に出た。三菱重工の先輩で憧れの井上とトップを並走したことも「テンションが上がるというか、良い絵だなと思った」と冷静。外国勢がスパートをかけた残り5キロでは集団がバラけて大迫と一騎打ちとなり、一度は前に出られたが「逆に動きの修正ができた」と自らを見失わなかった。

 今でも1500メートルで4分は切れない。高校2年時点で「僕はスピードがない」と、トラック向きでないと悟った。駒大入学直後には大八木弘明監督(64)から「マラソンで戦え」と背中を押され、走行距離を地道に消化。生命線のスタミナを磨き続けた。駅伝ファンからは“イチタカ・スマイル”の愛称で親しまれるが、笑顔の裏にはたゆまぬ努力があった。

 駒大の藤田敦史コーチ(46)のベスト記録2時間6分51秒を超えたことがうれしかったという。退寮の際に交わした「(2時間)6分、目指そう」という約束を果たし、さらなる高みを目指す。あくまでパリ五輪が最大目標だが「(8月の)世界選手権に出てみたい。MGCもチャレンジしたい。欲張りたい」という言葉には、手にした自信が宿っていた。

 ≪恩師・駒大大八木監督も代表へ期待≫駒大の大八木弘明監督は山下について「(大学に)入ってきた時からマラソンで伸びると思っていた。そういう結果になってうれしい」と話した。「プレッシャーに強くなってほしい」という思いも込め、箱根駅伝は3年連続で2区に配置。「もう少しで日本代表になれる。その座を獲ってほしい」と期待を込めた。藤田コーチは「20年前の私の記録で“勝った負けた”とやっているようじゃ勝負にならない。(其田と)2人がスパッと(自身の記録を)破ってうれしい」と語った。

 【山下一貴(やました・いちたか)】
 ☆生まれ&サイズ 1997年(平9)7月29日生まれ、長崎県長崎市出身の25歳。1メートル72、55キロ。今年1月に結婚し「プラスに働いている、と言った方が妻に喜ばれる」。

 ☆競技歴 長崎市立滑石中1年で友人に誘われ、競技開始。瓊浦(けいほ)高から駒大を経て20年4月に三菱重工に入社。箱根駅伝では2年から3年連続2区を走り、区間成績は13位、9位、13位。マラソンは21年びわ湖毎日、22年大阪に続き3度目。

 ☆イチタカ・スマイル 駒大3年時に駅伝部インスタグラムの一人一言コーナーで1学年下のマネジャーが命名。「それで注目されるならうれしい」。座右の銘は「笑顔」だが、笑顔で得したことは「ないです…」。

 ☆大食漢 駒大時代は一人、寮の食堂に残って爆食いしていたことで有名。2人前は余裕で、他人が残したおかずも全て平らげていた。「内臓が強いのでマラソンに向いている」と藤田コーチ。

 ☆珍事 3年時の箱根駅伝はスタート地点に到着するタイミングが遅れ、タスキリレーで約10秒のタイムロス。藤田コーチも「あの時も笑いながら走っていった。物事に動じない」と指摘する。

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