山沢拓也とマーカス・スミス 1本の糸で結ばれた味わい深いマッチアップ
Photo By スポニチ
ラグビー日本代表が4年ぶりにイングランド代表と対戦する。来年のW杯フランス大会では同じ1次リーグD組に入るライバル。その事実を抜きにしても、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)の前任者であり、多くの現代表選手と関わりを持ち、今も日本とつながるエディー・ジョーンズ氏が率いるチームであることが、一つの前哨戦にとどまらない想像力をかき立てる。
両代表の登録メンバーが発表になった10日夜、国際統括団体ワールドラグビー(WR)の日本語ツイッターアカウントが、「注目のマッチアップ」なる投稿をした。日本は山沢拓也、イングランドはマーカス・スミス。28歳と23歳。いずれも試合で10番を背負う司令塔。いわゆる“中の人”がどこまで事情を知っているかは定かではないが、個人的にも運命的であり、宿命めいたマッチアップと感じている。
山沢が初めて日本代表候補の合宿に招集されたのは12年のこと。当時はまだ埼玉・深谷高の3年だった。類い希なラグビーセンスとスキルセットの高さを見抜き、15人の頭脳であり心臓とも言えるSOを時間をかけて育てていこうという意思を示したのが、当時のジョーンズHCだった。
最初は練習生として、その後はW杯代表候補として、定期的に招集して自分の手元で育成するつもりだったのだろうが、残念ながら当時の山沢は故障がち過ぎた。膝のケガで長期離脱を繰り返し、結局エディー体制ではキャップを獲得していない。15年10月30日、東京都内で行われた退任前最後の会見で、叱咤(しった)激励するように、山沢にこの言葉を残した。
「今までたくさんのケガをしている。トップレベルのラグビーをするなら、自分自身で体を作らなければならない。才能はある。パススキル、ランニングスキル、スペースを見つける能力。左右で蹴ることもできる。若い時代のフランス代表のミシャラクをほうふつとさせる。体を作れば、19年W杯のキープレーヤーになれる」
周囲の期待ばかりがふくらんだ山沢だが、ご存じの通り19年W杯代表には選ばれなかった。4年間の選考過程を振り返っても、「惜しい」という表現は的確ではない。ジョセフHCが指揮した17年のアジア選手権でキャップを獲得したものの、その評価は決して芳しいものではなかった。目指すラグビースタイルの違いもあるが、忍耐強く使い続けて育てる前任者と、一定水準に達した選手をピックアップする後任者の方針の違いもあり、一時は見限られた状態だった。
謙虚な山沢は決して口には出さないが、なかなか代表に選んでもらえない状況に、不満もあっただろう。それでも自分自身にベクトルを向けて一回り、二回り成長し、昨季のリーグワンでは同僚の松田力也がシーズン終盤に故障後、10番を背負ってチームを初代王者に導いた。そうしたパフォーマンスがようやくジョセフHCが定める水準に達し、今年6月のウルグアイ戦では5年ぶりにキャップを獲得。コロナ感染で欠場を余儀なくされたフランスとの第1戦も、当初は10番を背負う予定だった。李承信、中尾隼人と3人いる現代表のSOの中で、オールブラックス戦、今回のイングランド戦と山沢が起用された理由は、間違いなく指揮官の思い描くヒエラルキーの一番手にいる証拠だ。
一方のマーカス・スミスは、今まさにジョーンズHCの「忍耐強く使い続けて育てる」方針の真っ只中にいる若き俊英だ。18歳で英プレミアシップでデビュー。19年W杯には間に合わなかったものの、最初のシーズンからハーレクインズを優勝に導き、「天才」と称えられた。昨年7月の米国戦で代表初キャップを獲得し、以後は10番に定着している。
そんなスミス本人と、スミスを起用し続けるジョーンズHCが、メディアの大逆風にさらされている。29―30で敗れた11月6日のアルゼンチン戦の敗因が、スミスとCTBオーウェン・ファレル主将の10番―12番コンビにあると批判された。地元メディアは日本戦でのコンビ解消を求める論調ばかりだったが、ふたを開けてみれば日本戦もコンビを継続。8日の会見では「このコンビを100%信頼している。まだW杯まで12試合ある。(これまでコンビを組んだ4試合を含め)16試合一緒にやれば、連携が深まる」と批判をかわしていたが、信念を貫いた形となった。
もし山沢がプレーできないほどの故障を抱えていなかったら、15年W杯で歴史的な3勝を挙げる前の年、スミスと同じように10番に抜てきしただろうか。福岡堅樹や藤田慶和を我慢強く起用して育てたように、山沢のテストマッチデビューも、もう少し早かったかも知れない。そのまま無事なら、W杯代表31人の一員になっていただろう。ジョーンズHCがプレースタイルも似通ったスミスにかける期待の高さは、そのまま山沢にかけていた期待を投影しているような気がしてならない。
結果的に山沢を連れて行けなかった15年W杯で、日本代表が南アフリカを倒す準備をしていたブライトンカレッジに、当時16歳だったスミス少年は在学中だった。プレミアシップでデビューを飾る、わずか2年前のことだ。英国屈指の名門校で、まだ歴史的な番狂わせを起こす前の日本代表を、どんな気持ちで観察していただろうか。あるいはその翌日、コンディショニングのために訪れた選手を見送った花道の中で、今も身長1メートル75と国際レベルでは小さな部類に入る司令塔は、何らかのインスピレーションを得ていたかも知れない。
山沢とスミス。エディー・ジョーンズという一本の糸でつながる2人の司令塔が、マッチアップを果たす。この試合の勝敗が、2人のラグビー人生に何らかの変化をもたらすかも知れない。たった一度の邂逅となるか、W杯へのプロローグとなるか。80分間の先に紡がれていくストーリーにも、さまざまな想像をかき立てられている。(記者コラム・阿部 令)
スポーツの2022年11月12日のニュース
-
W杯で日本と同組アルゼンチンはウェールズに逆転負け ミス多くイングランド撃破の勢い続かず
[ 2022年11月13日 04:24 ] ラグビー
-
三原舞依「今年も演技できて凄くうれしい」GP初優勝へ首位発進
[ 2022年11月13日 02:51 ] フィギュアスケート
-
ラグビー日本代表はイングランドに完敗 7トライを許し13―52
[ 2022年11月13日 02:17 ] ラグビー
-
イタリアがオーストラリアから歴史的初勝利 最後のゴールキック外れて1点差勝ち
[ 2022年11月13日 00:56 ] ラグビー
-
世界ランク1位のアイルランドがフィジーに快勝 メンバー大幅変更も貫禄見せる ラグビーANS
[ 2022年11月13日 00:03 ] ラグビー
-
【卓球・全農CUP】張本智和、順当に準決勝進出も…11歳の大野戦に「中国から帰ってきてもアウェー」
[ 2022年11月12日 21:31 ] 卓球
-
淡路島で3年ぶりの「運動会」五輪メダリストや野球界OBも参加 大盛況75000人
[ 2022年11月12日 19:25 ] スポーツ
-
復帰戦Vの織田信成「もののけ姫」を選んだ理由 「アシタカの苦悩、探し求めている姿を自分と重ねて…」
[ 2022年11月12日 19:05 ] フィギュアスケート
-
織田信成の復帰戦に多くの報道陣 連盟「これだけ来たのは初めて」国体選考会
[ 2022年11月12日 18:53 ] フィギュアスケート
-
女子は早田ひな、美誠に4―0快勝の平野美宇らが準決勝進出 男子の張本智和は順当4強
[ 2022年11月12日 18:46 ] 卓球
-
織田信成が復帰戦V「凄く楽しかった」 来季以降は「挑戦していいよ、という環境があるなら…」
[ 2022年11月12日 18:35 ] フィギュアスケート
-
NZが2大会連続6度目の世界一 イングランドとの接戦制す ラグビー女子W杯決勝
[ 2022年11月12日 18:14 ] ラグビー
-
アメフト京大 困ったら泉 困らなくても泉 エースQBが167ヤードの荒稼ぎで今季「初星」
[ 2022年11月12日 17:49 ] アメフト
-
織田信成、3247日ぶり現役復帰 フリー146・05点でV!4回転トーループ転倒も3回転半2度着氷
[ 2022年11月12日 17:17 ] フィギュアスケート
-
次期監督の杉山愛氏「ポテンシャルあるチーム。楽しみ」 日本、来季ファイナル予選出場逃すも
[ 2022年11月12日 17:08 ] テニス
-
蝉川泰果がプロ&アマ同一年Vに王手!石川遼、星野陸也が3差2位 男女通じ今季最多1万67人観衆沸かす
[ 2022年11月12日 16:42 ] ゴルフ
-
年間女王に王手の山下美夢有は2位後退も好位置維持「ショットが安定していた」 伊藤園レディース
[ 2022年11月12日 16:30 ] ゴルフ
-
馬場咲希が70で回り通算5アンダーの17位で決勝進出「最後まで諦めずにプレーを」伊藤園レディース
[ 2022年11月12日 15:42 ] ゴルフ
-
【卓球・全農CUP】石川佳純は2回戦敗退…長崎美柚は世界卓球チームメイトの佐藤瞳に敗れる
[ 2022年11月12日 15:39 ] 卓球
-
注目のアメフト「関関戦」は13日KO 7年連続へ腕ぶす関学大「WR三銃士」
[ 2022年11月12日 15:37 ] アメフト
















