井戸木鴻樹&新井貴浩のゴルフ化学変化⑧ ラフからのショット
これからの時期、芝が伸びるにつれて難しくなるのが、ラフからのショット。新井貴浩氏のようにパワーがある人でも、深いラフからボールを脱出させるのはひと苦労です。井戸木鴻樹プロによれば、無理をせず、ボールのライに応じたクラブ選択と打ち方をするべきだと言います。早速、そのコツを聞いてみましょう。進行役はティーチングプロのジミー常住氏が務めます。 【動画で見る・井戸木鴻樹&新井貴浩のゴルフ化学変化⑧】
常住 新井さんはラフからのショットをどのように打っていますか?
新井 ボールの上からクラブヘッドを打ち込む感じです。フライヤーにもなりますが、多少ボールが浮いているラフは、フェアウエーから打つよりも好きですね。
常住 確かにボールが浮いていると、ティーアップした状態に近いので打ちやすいのかもしれませんね。ただ、夏に向かって芝が元気になるとヘッドに絡んでくるだけに、やはり簡単には出せないと思いますが…。
井戸木 おっしゃる通り、ラフを甘く見ることは危険です。まずは距離よりも確実に脱出することを優先しましょう。ロフトの小さいクラブで打つと、ボールが上がらず、芝に勢いを止められてしまいます。20ヤードぐらいしか飛ばないのも、ボールが上がらないからです。ボールが沈んでいたら、5番ウッドの残り距離でも25度のユーティリティーを選択しましょう。むしろ、ユーティリティーの方が簡単にボールを上げられる分、飛距離が出る可能性すらありますよ。
新井 仮にもっと短いクラブでも届きそうなときはどうしますか?
井戸木 ボールがラフに少し隠れるぐらいで、ショートアイアンで打てる距離なら、積極的にグリーンを狙ってみましょう。ただし、通常よりもスピン量が減る分、ランが多く出ます。8番アイアンの距離でも9番アイアンで打つことをお勧めします。
常住 1番手下げて手前から攻めるんですね?
井戸木 正解です。ピンまで届かせたい気持ちを抑え、「グリーン手前に止まってもいい」と思ってボールを打った方が、コースマネジメント的にも成功するので、結果的にスコアアップにもつながります。その際、フルショットではなく、スリークオーターショットを心がけましょう。
新井 深いラフから打つときの注意点を教えて下さい。
井戸木 ボールがスッポリとラフの中に沈んでいる場合、ネック部分に芝が絡みつき、クラブフェースがかぶってしまいがちです。そのままインパクトを迎えると、ボールを左へ打ち出してしまいます。それを防ぐために、あらかじめアドレスからフェースを開いておきましょう。
常住 フェースを開いておけば、ソールが滑るので芝が絡みつきにくいですし、ラフからだとスピンがかかりにくい分、左右に曲がることも少なくなりますね。
新井 僕は深いラフのときにフェースを開くという発想が全くなかったです。ボールの下をヘッドが潜り抜けそうでちょっと怖い感じもしますね。
井戸木 ボールが浮いていればその心配もありますが、沈んでいるときは怖がらずにフェースを開いてみましょう。芝の抵抗が小さくなる分、振りやすさを感じると思いますよ。
(取材協力=兵庫・小野東洋ゴルフ倶楽部)
◆井戸木 鴻樹(いどき・こうき)1961年(昭36)11月2日生まれ、大阪府出身の60歳。豊川中(茨木市)3年時に日本ジュニア優勝。中学卒業後に研修生となり82年プロテスト合格。93年新潟オープンなどツアー2勝。ショットの精度に定評があり、01年以降7度フェアウエーキープ率1位となる。〝元祖日本一曲がらない男〟。13年全米プロシニア選手権で優勝し、日本男子初のメジャー覇者に輝く。
◆新井 貴浩(あらい・たかひろ)1977年(昭52)1月30日生まれ、広島市出身の45歳。広島工高―駒大を経て98年ドラフト6位で広島入団。05年に43本塁打で本塁打王。08年阪神移籍。11年に93打点で打点王。15年広島復帰。16年に通算2000本安打、通算300本塁打をマークしリーグVに貢献。MVPに輝く。日本代表の侍JAPANでも活躍。18年引退後にゴルフを始めベストスコアは87。
◆ジミー・常住 本名・常住治臣(つねずみ・はるおみ)1981年(昭56)12月15日生まれ、東京都出身の40歳。日本プロゴルフ協会(PGA)会員。
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