テキサスの乱射事件に揺れ動く米国 悲劇の連鎖はくい止められるのか?
【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】バイデン米大統領は5月29日、小学校で銃の乱射事件が発生したテキサス州南部のユバルディ(人口1万6000人)を訪れたが、地元の人たちによる「DO SOMETHING!(どうにかして)」という連呼で迎えられた。その問いに対する大統領の答えは「WE WILL」。助動詞によってその意思があることを示しただけだった。
トランプ元大統領は全米ライフル協会の年次総会で「銃を規制するのではなく学校の警備を強化するべき」と演説して支持者から拍手を集めたが、教師や職員が銃を持っているような学校に子どもを通わせたいという親はいないだろう。
その一方で、トランプ氏が顔をそむける「厳しい銃規制が確立した社会作り」についてバイデン大統領も明確な答えを持っていない。それが動詞と目的語が存在しないわずが2語の回答であり、そこに乱射事件が絶えない米国の暗部が見え隠れしている。
18歳のサルバドール・ラモス容疑者が82歳の祖母の顔面に発砲して射殺したあと、ピックアップ・トラックで小学校に向かい、排水溝に車を突っ込んで運転席を飛び出たのが5月24日の午前11時28分。すでに手にしたライフルで周囲にいた2人の男性に発砲しており、そこからロブ小学校に突入して乱射するまでに要した時間はわずか4分間。小学校の職員にとっては防ぎようのない事件だった。
警察が校内に入ったのは午前11時35分。しかし教室にカギがかかっているととして廊下で待機したために、ラモス容疑者は午後12時21分までライフルを発射していたとされている。その間に9歳から11歳までの児童19人と44歳と48歳の女性教員2人が死亡。警察当局は「判断が間違っていた」と対応を誤ったことを認めたが、乱射事件に即座に対応できるユニットを持っている警察は地方に行けば行くほど少ないのではないかと思う。
乱射事件当日、同じテキサス州のダラスでNBAプレーオフの西地区決勝シリーズに臨んでいたウォリアーズのスティーブ・カー監督(56)は試合前の会見で「バスケットボールの話はしない」と前置きした上で「ここから400マイル(約640キロ)離れた場所で14人の子ども(その後19人)と1人の教師(その後2人)が殺された。もううんざりだ。もしきょうの出来事が皆さんの身に起きたらどう感じるだろうか?」とテーブルを拳で叩きながら怒りに満ちた表情で事件について言及。「沈黙しているときじゃない。何かをするべきときなんだ」というコメントはNBA担当記者ではなく、まさに米政府に対して向けられていた。
レバノン・ベイルート出身のカー監督は、大学教授だった父マルコムさんをイスラム過激派に殺害されており、米国内で同じような事件が起こるたびに改善を求めてきたが依然として事態は変わらぬまま。米国の銃社会が引き起こす悲劇に対し、NBAの監督としてではなく1人の人間として“社会の変革”を訴えた。
米国では2012年にもコネティカット州の小学校で20人の児童が殺害される乱射事件が発生しており、レイカーズのレブロン・ジェームズ(37)も「我々は最も安全であるべきはずの学校で子どもたちを傷つけ続けている。そう、学校でだ!」と度重なる学校での乱射事件に憤りをぶつけていた。
ロブ小学校での乱射事件当日の翌日からは夏休み。亡くなった48歳の教員、イルマ・ガルシアさんには4人の子どもたちがいるが、イルマさんと24年間連れ添った父ジョーさん(50)も事件から2日経過した26日、葬儀に参列して自宅に戻ったあとに心臓発作で急死しており、家族にとってはまさに二重の悲劇となってしまった。
10歳のアリシア・ラミレスさんはサッカーが大好きで、11歳のレイラ・サラザールさんはランニングと水泳、そしてダンスに熱中。そんなスポーツが大好きな少女たちが、なぜ夏休みの前日に学校で命を落とさなくてはいけないのか?事件原稿とカー監督の記事を書いていると、やりきれない気持ちになった。だからバイデン大統領にはぜひ「WE WILL」のあとに続く言葉を早急に示してほしい。次の悲劇が起こる前に…。
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった2018年の東京マラソンは4時間39分で完走。
2022年6月1日のニュース
-
メドベージェワ「国際こどもの日」記念し自身の幼少期写真披露に「素敵な笑顔」「かわいい」の声
[ 2022年6月2日 00:27 ] フィギュアスケート
-
全仏OP混合ダブルス 柴原 日本人25年ぶりの決勝進出
[ 2022年6月2日 00:19 ] テニス
-
本田真凜 この日18歳となった妹・望結を祝福「おめおみ!」「だいすきだよ」
[ 2022年6月1日 23:00 ] フィギュアスケート
-
東京ベイ・海士広大 オフの旅行計画白紙も…うれしい誤算「急に電話があってびっくり」
[ 2022年6月1日 22:59 ] ラグビー
-
世界の名手が期待のWTB根塚を絶賛「読みが優れている」リーグワン・東京ベイがファン感を開催
[ 2022年6月1日 21:51 ] ラグビー
-
3年ぶり代表活動参加の立川「フレッシュな気持ちで」リーグワン・東京ベイがファン感を開催
[ 2022年6月1日 20:28 ] ラグビー
-
陸上・遠藤日向 日本選手権1500mは「調整不足」で欠場 5000mはエントリー
[ 2022年6月1日 20:07 ] 陸上
-
高梨沙羅 おしゃれな眼鏡姿に絶賛の声「知的でかわいいメガネ美人」「とても似合うよ」
[ 2022年6月1日 19:15 ] ジャンプ
-
今季メジャー初戦 木下稜 連覇に意欲
[ 2022年6月1日 19:07 ] ゴルフ
-
新ツアーに日本から谷原、木下稜、香妻が挑戦「良いものを日本に持ち帰りたい」
[ 2022年6月1日 18:43 ] ゴルフ
-
好感度No・1女子プロゴルファー吉本が大人メイクで2位発進「中学生と言われるのは嫌」
[ 2022年6月1日 17:37 ] ゴルフ
-
橋添4姉妹の末っ子・穂、11位発進「堅忍果決」で将来の日本一目指す ECCレディース開幕
[ 2022年6月1日 17:18 ] ゴルフ
-
バド男子複・園田啓悟、現役勢に活「何やってるんだ!」第一線退くも急造ペアで優勝
[ 2022年6月1日 17:06 ] バドミントン
-
日本ハンドボールリーグ男子のジークスター東京が新体制発表 悲願の日本一へ、6選手が新加入
[ 2022年6月1日 15:06 ] ハンドボール
-
奈良岡功大、ランキングサーキット初制覇「僕がしっかり引っ張る」海外転戦で得た自信胸に
[ 2022年6月1日 14:33 ] バドミントン
-
メジャー初挑戦の西郷真央 師匠・ジャンボからの激励を胸に「全力で挑戦する」全米女子OP
[ 2022年6月1日 12:07 ] ゴルフ
-
ラグビー チャリティーマッチのトンガ特別チーム発表 リーグワン中心に中島イシレリらを選出
[ 2022年6月1日 11:44 ] ラグビー
-
リーグワン横浜 南ア代表SHデクラーク獲得発表!「インパクトを与えていければ」
[ 2022年6月1日 11:24 ] ラグビー
-
テキサスの乱射事件に揺れ動く米国 悲劇の連鎖はくい止められるのか?
[ 2022年6月1日 11:09 ] スポーツ社会
-
NBAファイナルの優勝オッズはウォリアーズが1・6倍でリード MVP一番人気はカリー
[ 2022年6月1日 08:40 ] バスケット
-
日本のお金はどんなふうに使われてんの?学生とか困っている人に回すのがホンマの使い道やで
[ 2022年6月1日 08:00 ] アメフト
-
畑岡奈紗がメジャー10勝のソレンスタムから学ぶ 全米女子OP
[ 2022年6月1日 07:32 ] ゴルフ
-
ジョセフジャパン 代表合宿メンバー34人発表、新鮮力SO争い!中尾、山沢、李が火花
[ 2022年6月1日 05:30 ] ラグビー
-
笹生「楽しんで」挑む全米女子OP最年少連覇 笑顔で優勝トロフィー返却「See you!」
[ 2022年6月1日 05:30 ] ゴルフ
-
車いす男子単 16歳・小田が4大大会快勝デビュー、史上最年少出場「素直にうれしい」
[ 2022年6月1日 05:30 ] テニス
-
フィギュア女子 坂本に神戸市表彰、4回転挑戦は「これから体づくり」
[ 2022年6月1日 05:30 ] フィギュアスケート