<羽生結弦を語ろう(1)>盟友ハビ「彼はまるで闘牛士」4回転半は「可能だ」

[ 2022年2月3日 07:15 ]

18年平昌五輪で仲むつまじい様子の羽生(右)とハビエル・フェルナンデス
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 4日開幕の北京五輪フィギュアスケート男子で94年ぶりの3連覇を狙う羽生結弦(27=ANA)へ、特別メッセージが届いた。羽生ゆかりの人物が登場するエール連載「羽生結弦を語ろう」がスタート。第1回は現役時代は同門の盟友、かつ最大のライバルだった2018年平昌五輪銅メダルのハビエル・フェルナンデスさん(30=スペイン)がオンラインで取材に応じ、羽生の素顔について語り尽くした。

 私とユヅルは、長年の同志であり、親友であり、兄弟、家族、それ以上の強い絆がある。18年平昌五輪で、2人で一緒に表彰台に上がってメダルを獲得したことは忘れられない思い出。偉大なライバルであり、良き友人であるユヅルがそばにいてくれたことに感謝しているよ。

 ユヅルは素晴らしい才能に満ちた選手。それだけではなく、日々の練習で努力をし続けていて、強い個性を持っている。とても表現力の豊かな選手で、人々がそのように彼を見てくれることを私は望んでいる。しかし、彼をどのような選手かと表す言葉に最もふさわしいのは、勝つことを好む「Ganador」(勝利者)。まるで「Luchador」(戦士)「Guerrero」(闘士)…。そう!「Torero」(闘牛士)のようだよ。

 ユヅルがどんな人かと言えば、彼の行動には2つの振る舞い方がある。一つはリンクでの振る舞い方。とても集中しながら良い準備をするのを好む。それは大会だけでなく日々の練習でも、常にとても集中している。その時はあまり話さないけど、それがユヅルのリンクでの振る舞いだ。

 その一方で、リンク外ではリラックスしていて、僕らと一緒にいろんなことで楽しむのが好きな青年だ。例えば、写真やビデオを見たりと(大げさなことではなく)小さなことに喜びを感じている。そうそう、いろんな大会でファンからもらったプレゼントのけん玉で遊んだりして過ごしていたよ。緊張が続く練習や大会のリンク外では、いろんなことで楽しんで過ごしている、いわゆる、普通の青年だよ。そんな2つの振る舞い方をするユヅルを我々スケート仲間はみんな知っていて、親近感を持っている。彼もそれを好んでいるようだよ。

 ユヅルが挑む4回転半は「可能だ」と思う。数年前にユヅルに4回転半が可能か聞かれたら「分からない」と答えたと思う。でもユヅルのビデオを見た今は、ユヅルは練習を積み重ねてほぼ完璧に跳んでいるようなので「可能だ」と言える。もし成功したら、世界で初めて4回転半を跳ぶ選手となり、それが「可能だ」と思うが、北京五輪で成功するかどうかは分からない。みんなで見守りたいね。

 金メダルを獲るためには、世界で一番素晴らしい選手の一人であるという自信を持つこと。そしてケガに気をつけながら良い練習を行い、本番に向けて良い準備を行うことだろう。北京五輪で勝つことは難しい。ネーサン・チェンを筆頭に、ユヅル以外の日本人選手も良い選手たちがいるし、強いライバルはたくさんいるからね。

 では、北京五輪でユヅルは何をすればいいか?応援メッセージにもなるけど、彼は素晴らしいプログラムを準備して、いつものように滑ればいい。これまでもそうだったように、彼のスケーティングはいつも見る者を魅了する。それがユヅルの武器になるはずだ。

 ≪何度も名勝負≫羽生とフェルナンデスさんはカナダ・トロントの名門「クリケット・クラブ」でともに練習を積んだ仲間であり、試合では何度も名勝負を繰り広げてきた。15、16年世界選手権では羽生がSPで首位に立つも、フリーでフェルナンデスさんが逆転優勝。逆に、17年世界選手権ではSP首位のフェルナンデスさんを同5位の羽生がフリーでまくって大逆転Vだった。18年平昌五輪ではSPで羽生が首位、フェルナンデスさんが2位と好スタート。フリーでも好演した2人が同じ表彰台に乗った最後の大会となった。

 ◆ハビエル・フェルナンデス 1991年4月15日生まれ、スペイン・マドリード出身の30歳。11年からブライアン・オーサー・コーチに師事。サルコー、トーループの4回転を武器に15、16年世界選手権2連覇。五輪は10年バンクーバー14位、14年ソチ4位、18年平昌銅メダル。19年1月の欧州選手権で7連覇を達成し、現役引退。現在は地元でアイスショーやスケート教室を通じて競技普及などを行う。1メートル73。

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2022年2月3日のニュース