【ラグビー日本代表2021秋の陣《2》】満を持してスタートラインに ディラン・ライリーが描く未来

[ 2021年9月30日 09:59 ]

ディラン・ライリー
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 南アフリカ生まれでオーストラリア育ち。日本代表資格を得られるのはこの秋と分かっていながら、春も正規スコッドに混じって合宿に参加した。それは首脳陣の期待の高さの表れに他ならない。晴れて23年W杯へのスタートラインに立ったCTBディラン・ライリー(24=埼玉パナソニックワイルドナイツ)は「(春の合宿参加は)素晴らしい経験になった。これまで体験したことのないレベルの高さだった」と振り返る。その経験は、大きなアドバンテージになるだろう。

 南アフリカのダーバンに生まれ、10歳の時に一家でオーストラリアに移住。ラグビーを始めた。U20オーストラリア代表に選出されるなど名の知られる存在だったが、高校卒業時にプロ契約をオファーしてくれるクラブはなかった。失意のまま地元の大学へ進学。そんな時にライリーの存在を知ったパナソニックから声が掛かり、入団テストを経て来日。日本で活躍する海外選手は多数いるが、学生ラグビーからのたたき上げでもなく、海外での実績もないライリーのような存在は、珍しい部類に入る。

 見た目はひょろ長く映るが、1メートル87、102キロのサイズはインターナショナルレベルでも遜色ない。5月に閉幕したトップリーグでは2シーズンプレー。アウトサイドセンター(13番)として力ずくでディフェンスラインを突破する威力、そして抜け出した後のスピードは国内で1、2を争うレベル。20年は南アフリカ代表のダミアン・デアレンデ、21年は元ウェールズ代表のハドレー・パークスとコンビを組んだが、インターナショナルの2人に全く見劣りない存在感を発揮したことで、日本代表への招集は必然だった。オーストラリアでは日本への“流出”を惜しむ報道があったほどだ。

 春の合宿では今後ジャージーを争う中村亮土、ラファエレ・ティモシーと多くの時間を過ごし、「それまでは対戦相手だったが、同じポジションで競争したり、国際舞台で経験した選手から学ぶことは多かった」と話す。中村はディフェンス、ラファエレは精密なスキルと持ち味はそれぞれ異なる。誰が先発の座を奪うかはチームが目指すプレースタイルや周りの選手との兼ね合いなども考慮されそうだが、「どの分野も日本のスタイルに合うようにしたい。そしてよりフィットネスを上げたい」と生真面目に自分と向き合っている。

 デザインやクリエイティブ分野にも興味があるというライリー。昨年、オーストラリア出身、埼玉パナソニック所属という共通点を持つジャック・コーネルセン、ベン・ガンターとの3人で立ち上げたダッフルバッグブランド「the blank collective」の名称に込めた思いを、こう語る。

 「blank(ブランク)は真っ新なキャンバスを表している。バッグは自分で仕切りを入れる場所を変えられるようになっている。どんなキャンバスも目的地も、一つとして同じものはないからね」

 自分自身のラグビーキャリアというキャンバスにも、輝かしい未来を描いていけるか。

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2021年9月30日のニュース