パラアーチェリー上山・重定ペアは敗退 逆ナンから始まった出会い「発表会の場」で充実感

[ 2021年9月4日 19:43 ]

東京パラリンピック・アーチェリー ( 2021年9月4日    夢の島公園アーチェリー場 )

混合リカーブ団体(車いす、立位など)準々決勝 的を狙う上山友裕。左は重定知佳
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 混合リカーブ団体(車いす、立位など)は上山友裕(34=三菱電機)重定知佳(38=林テレンプ)組の「ウエシゲ」ペアが、イタリア組に2―6で敗れて4強入りを逃した。

 第1セットを先取して2―0としたものの、安定感が光った相手に及ばなかった。個人で初戦敗退に終わった上山は「正直メダルが欲しかった」としつつ、「昨日(個人)で終わっていたら後悔しかなかったけど、重定さんと組んで本来の上山が見せられた」とすがすがしい表情。重定は「悔しいけど楽しめた。今の実力はここ」と受け止めつつ、ペア結成からの約5年間を思い起こして「上山君と4、5年歩んだ発表会の場。私が年上だけどお兄ちゃんみたいに頼りにしている。安心して打てた」と時折涙を流した。

 2人の出会いは16年リオ大会後の全国障がい者スポーツ大会。車いすテニス引退後、15年からアーチェリーを始めた重定は「1年間だけしっかりやって、長く続けるつもりはなかった」と同大会をゴールに定めていた。しかし会場でトイレを待っている時にリオ大会7位で憧れの上山を偶然見かけ、「芸能人の感覚で」思わず体が動いた。翌日の練習を見て欲しいと頼み込み、「“逆ナン”とか言われるけど、あの時上山君に会っていなかったら今ここに私はいない」と再び気持ちに火がともった。

 リオ大会は個人のみの出場で、混合戦を見て「僕も2つメダルを目指したい。女子の選手を発掘しよう」と決意していた上山にとっては運命的な巡り合わせだった。実際に練習を見て重定のフォームに「世界を目指せる」と感じた。この年にペアを結成。17年に2人で初出場した世界選手権で全く歯が立たなかったイタリア相手に、この日は「勝負できて、いけるんじゃないかと思えた」と語るほど強くなった。

 上山が大阪、重定が北九州と拠点は異なるが、東京大会に向けては新型コロナに制限されながらも合宿を重ねた。代表の強化合宿がなくても必ず集まり、「ほぼ会わない月はないくらい一緒に練習した」(重定)。離れていても悩み事があれば電話で相談するなど、こまめにコミュニケーションを取った。上山が「電話で1時間くらい経ったかなって思ったら2時間くらい喋っていた」と苦笑いするほど公私ともに仲の良いコンビ。互いをカバーし合うプレーに、あうんの呼吸で目指した東京までの道のりが表れていた。

 個人の初戦敗退で「アーチェリーを辞めようと思った」という上山は、混合戦を終え「やっぱり楽しい。アーチェリー以外で面白いことあったら教えてください」と笑った。重定は「私はちょっと休憩したい」としつつ、相棒と肩を並べて終えた初の大舞台に「憧れていた人とこの舞台に立てたことが一番うれしい。ありがとう」と充実の表情を浮かべた。

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