自転車日本代表トレーナー・菊地孝明氏 気持ち高める「精神的支柱」

[ 2021年8月26日 05:30 ]

菊地コーチ(左)に支えられながら引き揚げる杉浦(撮影・光山 貴大)
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 【支える人(2)】夏の祭典を迎えたパラアスリートは、東京パラリンピックまでの道のりをどのように乗り越えてきたのか。選手に寄り添い、ともに戦ってきた家族やスタッフ、組織など周囲にスポットを当てる。

 自転車女子の杉浦佳子(50、楽天ソシオビジネス)がレースを終えると、すぐさま隣に歩み寄る人物がいた。パラ自転車日本代表のトレーナー、菊地孝明氏(45)だ。杉浦を支えながら、2人でミックスゾーンを通過する姿はまさに二人三脚。自転車チームにとって欠かせない存在となっている。

 高校時代に自転車競技でインターハイや国体に出場経験のある菊地氏。元々はスポーツジムのトレーナーだったが、09年にパラトレーナーに就任した。きっかけは、小学校時代から障がい者と接することが多く「何か貢献できることはないかと思った」。中級障がい者スポーツ指導員、障がい者スポーツトレーナーの資格を取得し、12年ロンドン大会、16年リオ大会ではパラ自転車競技日本代表に同行した。

 一般的なトレーナーのイメージだと、体のケアや治療がメインだが、パラの場合は違うという。「選手たちはメンタルが不安定。そこをどう理解して、どう良い状態に持っていくかが最大の仕事。独特なものがある」と菊地氏。杉浦は心配性で、大会が近づくと「私、メダル獲れるんでしょうか?大丈夫でしょうか?」と不安になることも。そんな時に備え、日頃から観察し、コミュニケーションを取りながら「気持ちを盛り上げていく。一番気を使うところ」と怠らない。

 これまで2大会を経験してきたが、今回は新型コロナウイルスの影響で環境が大きく変化した。「まずは選手たちを感染させないこと。管理することが増えた」。全ては、夢舞台に懸けてきた選手のため。時にはきつく注意喚起することもある。それができるのは、信頼関係が構築されているからこそだ。
 パラアスリートを支えるにあたって持ち続けている思いがある。「選手たちとの信頼、信用が強さに表れる。どれだけスタッフが選手のためにできるか」。選手たちが身も心も万全の状態で臨む裏に、精神的支柱がいる。(滝本 雄大)

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