高橋侑 初の五輪!一度“逃した”切符、リオ銀樋口撃破でつかんだ レスリング男子フリー57キロ級

[ 2021年6月13日 05:30 ]

レスリング東京五輪代表決定プレーオフ ( 2021年6月12日    東京・味の素ナショナルトレーニングセンター )

樋口黎(左)と対戦する高橋侑希(日本レスリング協会提供)
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 レスリング男子フリースタイル57キロ級は17年世界王者の高橋侑希(27=山梨学院大職)が16年リオデジャネイロ五輪銀メダルの樋口黎(25=ミキハウス)を4―2で下し、初の五輪代表を決めた。5月の世界最終予選で1位となって五輪出場枠を獲得。リオデジャネイロ五輪から出場権を争ってきたライバルとの代表決定戦を制し、04年アテネ五輪から4大会連続で表彰台に立ってきた日本伝統の最軽量級の看板を背負うことになった。

 試合終了の数秒前に勝利を確信した高橋侑は、大きく手を叩いた。自身が獲得してきた出場枠を手中に収め「僕が取ってきた切符なので当然。やっとスタートラインに立てた感じ」とうなずいた。

 「自分のペースで攻める」というプラン通りに試合を展開。2―0の第2ピリオドで2失点して一時はリードを許しても「相手はこれくらいの余力なんだと、負けはしないと思った」と冷静だった。終盤にタックルに入ってきた相手を返して再び2点を追加し、宿敵との勝負を決めた。

 一度は断たれかけた悲願だった。メダル獲得で五輪代表が決まる19年世界選手権で敗れ、五輪予選出場権を懸けた同年12月の全日本選手権決勝も樋口に敗戦。ここまではリオ五輪前と同じ道をたどったが、結末は違った。2位に入れば五輪代表が決まった4月の五輪アジア予選で樋口が体重オーバーで失格。これを受けて高橋侑が5月の世界最終予選に派遣されて1位となって五輪出場枠を獲得し、一発勝負の代表決定戦に持ち込んだ。「リオで失敗して6年越し。同じ感じでここまで来ちゃっていたけど諦めなくて良かった」と言葉に実感がこもった。

 喜びを真っ先に伝えた相手は妻・早耶架さん。前日には家族の寄せ書きが入った試合用のハンカチを贈られ「書き過ぎて(規定の)白じゃないじゃん、感動させるなよ」と言葉を交わした。妻からの「自分を信じていつも通り。今日はきっといい日になる」というメッセージをシングレットの内側に忍ばせて力に変え「いい日になりました」と破顔した。

 「二度と経験できない悔しさでどんなことも乗り切れる自信がついた。もう金メダルしか見えていないです」。どん底でかすんでいた金メダルを視界に捉えた。

 ◇高橋 侑希(たかはし・ゆうき)1993年(平5)11月29日生まれ、三重県桑名市出身の27歳。桑名クラブで小学3年からレスリングを始め、三重・いなべ総合学園高時代に全国高校総体3連覇。10年ユース五輪金メダル。17年世界選手権で男子フリー日本勢36年ぶりの金メダルを獲得。18年世界選手権は銅メダル。昨年末にALSOKを退社し、今春から母校の山梨学院大職。1メートル59。

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