コロナに対する米国のスポーツ界の対応 模索の中に見え隠れしている問題解決への糸口

[ 2021年5月2日 09:17 ]

大リーグ・レンジャーズのホーム開幕戦に詰めかけた地元のファン(AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】1日に米フロリダ州で判明した新型コロナウイルスの新規感染者は5419人で死者は78人。24時間で1万人以上の感染者を出していたピーク時と比較すれば減少しているが、5000人以上はこれで5日連続。ここ2週間の陽性率は5・64%~8・33%の間だが、4月27~30日は4日連続で5%台に収まっている。

 ワクチンを少なくとも1回接種したのは州全体の人口の47%に相当する887万人。ワクチン接種の進行に比べ、フロリダ州は依然として感染者と死者の数、そして陽性率は「下げ止まり」の状態が続いている。

 年間を通して湿度が60%を超え、気温も高いフロリダ州でなぜウイルスの感染が広がるのかを知りたいのだが、「LOCAL10」というサイトではその件については触れていなかった。温暖でビーチも豊富。どうしても無防備になりやすい土地柄なのか、それとも高齢者の比率が高いからなのか?そこはよくわからない。

 検査の陽性率が1%台に低下し、ワクチン接種率が7割を超えたカリフォルニア州ではアリーナや球場に収容能力の10~30%という制限を設けて観客の動員を再開。4月30日にはアナハイムのディズニーランドも入園者を25%に抑えて1年1カ月ぶりに営業を再開している。

 ロサンゼルスを本拠にしている大リーグのドジャースの直近のホームゲームとなった4月28日のレッズ戦での入場者数は1万5052人。これは収容能力の27%となっている。室内競技のNBAでもカリフォルニア州に本拠を置くレイカーズやウォリアーズが先月からスタンドにわずかながらもファンを迎え入れ始めた。

 ただしそのカリフォルニア州の新規感染者は2094人で死者は158人。大幅に減少しているとは言え感染が「終息」したわけではない。

 「下げ止まり」となっているフロリダ州のチームは対応が別れている。大リーグのマーリンズ(マイアミ)やレイズ(タンパ)、そしてカナダのトロントから同州ダニーディンへ今季に限って拠点を移したブルージェイズは20%前後で観客を動員。NBAではオーランドを地元にしているマジックもアリーナに収容能力の20%ほどの観客を動員している。

 ただしNBAのヒート(マイアミ)と、ブルージェイズ同様にトロントからフロリダ州に移動してきたラプターズ(タンパ)はまだ無観客。それはまだ予断を許さない状況が続いているからだと判断している結果なのだろう。

 テキサス州アーリントンを本拠にしている大リーグのレンジャーズは4月5日のホーム開幕戦から「100%」で観客を動員。このときバイデン大統領は「時期尚早」と批判していたが、目下のところクラスターのような事態には至っていない。同州での4月30日での新規感染者は3426人。5万人を超えた昨年12月の数値から比べると、テキサス州は劇的に減少した州のひとつだ。

 今年1月には15%台だったテキサス州の検査での陽性率は4%台。フロリダ州同様に“下げ止まり感”はあるが、落ち着いた状態にはなっている。少なくとも1回のワクチンを接種した人は州全体の72%に相当する1837万人。接種率の高さが陽性率への不安を払しょくしているような対応に見てとれる。

 感染者数、陽性率、ワクチン接種率…。その数値がスポーツにどのような影響を与えるのかは過去に経験がないので誰もわからない。しかし世界最多の感染者数と死者数を出してしまった米国は、この問題解決にあたっては“最後方”から猛烈に追い上げている。スポーツという切り口であっても、そこには社会を元に戻すにはどうすればいいのかという試みが見え隠れしている。

 今、日本は社会もスポーツも窮地に立たされている。ただし後から追いかける立場?になったために、フロリダ型で行けばいいのか、テキサス型かカリフォルニア型なのかという学習が可能。つまり各種の「参考書」が太平洋の対岸に出てきている。窮地にいるからこそ“熟読”する価値はあると思う。
 
 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった2018年の東京マラソンは4時間39分で完走。

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