駒大・大八木監督「男だろ!」熱血連呼が復活V導いた、「令和版」指導スタイルでイズム浸透

[ 2021年1月4日 05:30 ]

第97回東京箱根間往復大学駅伝 復路 ( 2021年1月3日    神奈川・箱根町~東京・大手町 5区間109・6キロ )

10区残り1キロ、石川(右)に車から声をかける駒大・大八木監督(中央)(撮影・木村 揚輔)
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 駒大指導歴26年目。あまたの激闘を制し、名選手を育て上げた大八木弘明監督(62)の喜びが大手町ではじけた。「(9区を終えて)無理かなという思いはあった。諦めない気持ちが本当に優勝につながったと思う。選手に感謝したい」と興奮気味に語った。

 2008年の優勝以降、長らく箱根駅伝の頂点からは遠ざかっていた。09、18年には屈辱のシード落ちも経験した。「優勝できない時期は、練習方法や子供たちへの接し方を変えた方がいいのかと悩んだ。何かを変えなきゃいけないのかと模索していた」と復活のきっかけを探していた。

 そんな状況で新型コロナウイルスの感染が広がった。グラウンドでの練習は規制され、河川敷や人のいない時間でのロード練習だけになった。「年齢を理由に選手の朝練習を見ていなかったのを変えよう」。昨年4月から、午前5時45分からの朝練習で、かつてのように自転車の伴走を再開。コロナ下で練習が思うようにできずに戸惑う選手に対し、大八木監督自らが闘う姿勢を示してきたことで選手のモチベーションにもつながった。「俺も一生懸命やっているんだと姿勢を見せて頑張って指導していた。本気でお前たちを見ているんだよというのが伝わってきた」と目の色を変えて苦境を乗り越えてきた。

 レースの監督車両から「男だろ!」と熱い言葉をかけるのは変わらない。ただ、指導スタイルは「令和版」にアップデートした。かつては厳しい指導が代名詞ともなっていたが「現代の子供たちの性格、育ち方も昔とは違うので接し方も変えている」と対話を重視。選手寮のサウナでは選手とともに汗を流してコミュニケーションをとるなど、一昔前と比べて選手との距離感は近く「第2の父」と慕われるようになった。

 チームには駒大の教え子で元日本記録保持者の藤田敦史コーチ(44)が加わり、大八木イズムが選手たちに浸透しやすい体制が整いつつある。「若いときは1人でやってきたがマネジャー、スタッフに助けてもらった。以前の優勝もうれしいが、今回の優勝も最高にうれしい」。激闘を終え、好好爺(こうこうや)然とした表情に戻った。

 ◆大八木 弘明(おおやぎ・ひろあき)1958年(昭33)7月30日生まれ、福島県出身の62歳。中学時代から陸上を始め、会津工高卒業後に実業団の小森印刷(現小森コーポレーション)に就職。24歳で駒大夜間部に入学し、箱根駅伝は3度出場した。大学卒業後にはヤクルトで選手兼コーチとして活躍。95年から駒大コーチに就任し、04年から監督を務める。教え子には東京五輪マラソン代表の中村匠吾らがいる。

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2021年1月4日のニュース