データで見る八村の第48戦 9本の3点シュートに見る未来への前進
9日のサンダー戦まで47試合に出場して3点シュートを1試合平均で1・7本しか放っていなかった(成功は0・5本)八村塁(22)が、バックス戦では9本もラインの外からシュートを打った。第2Qの9分4秒にはジェローム・ロビンソン(23)へのスクリーンから、反転してリングに近づくのではなく、逆に離れて距離を作って右サイドから3点シュートを成功。「ピック&ロール」ではなく「ピック&ポップ」で3点を加えたことは、今後につながる貴重なプレーだった。
3点シュートは今季87本放って成功は25本。成功率は28・7%と決して高い数字ではない。現在のNBAでは八村のようなパワーフォワードがラインの外に移動して“長距離砲”を放つのはすでにオフェンスの定番になりつつあり、パワーワードの便宜上の番号から「ストレッチ4」とも呼ばれている。
パワーフォワードの選手たちは大学時代にはほとんどインサイドでのプレーが主体になっているので、NBAに入って最初から遠い位置で勝負できる選手はほとんどいない。しかし1クオーターの時間が国際ルール(10分)より2分長くなるNBAでは、チームの3点シュート成功率が30%台の後半を維持できるなら、2点を狙うより3点の方が得点効率が良いとされているため様相が異なってくる。アウトサイドからのシュート能力がある選手だけで固めているロケッツなどは1試合平均でフィールドゴール(FG)試投数の半分に相当する45本をラインの外から打っており、八村もその流れに乗っていかなくてはいけない。だからきょうのバックス戦はそんなテーマを掲げて臨んだ試合だったのかもしれない。
今季のMVPは昨季に続いてバックスのヤニス・アデトクンボ(25)になるだろう。ウィザーズ戦ではモーリッツ・バグナー(23)に“頭突き”をくらわせて一発退場となったが、それでも10分の出場で12得点を稼いでいる。そのまま最後までコートにいれば、今季平均の29・8得点は楽々とクリアしたはずだ。
八村とのマッチアップで始まったこの試合で彼は開始51秒、自陣でリバウンドをキープしてからドリブル4回で「コースト・トゥ・コースト」を完結させている。ハーフラインからわずか6歩でユーロステップからのレイアップを成功。マークしていた八村はなすすべがなかった。
しかし211センチで超ロングストライドを駆使する彼にも“弱点”がある。多くの選手が進歩させようとしている3点シュートの今季の成功率は昨季の25・6%から上がったものの、それでもまだ30・4%。もし31%以上が10人もいるロケッツにいたら「精度が足りない」としてベンチを温めるかもしれない数字でもある。
それでもアデトクンボは今季1試合平均で4・7本の3点シュート(成功1・4本)を試みている。昨季は2・8本だったから「自分を変えよう」とする意図がはっきりと見えている。
打たなければうまくならないし、なにより永遠にリングの中にボールが吸い込まれることはない。「オーランド・バブル」と呼ばれる再開シーズンでウィザーズは7戦全敗。ジョン・ウォール(29)、ブラドリー・ビール(27)、ダビス・バターンズ(27)といった主力がいない中で芳しい成績はあげていないが、負けたとは言えバックス戦では確かな収穫があった。
そう、八村は1試合で9本も3点シュートが打てたのだ。しかも「ピック&ポップ」というこれまでとは違ったパターンでも1本成功。一度もリードすることなく113―126で敗れた試合だったが、未来につながる“前進”はあったと感じている。(高柳 昌弥)
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