佐々木隆道氏 今後は「まずは自分をコーチとして成長させることが第一」

[ 2020年6月20日 05:30 ]

今季で現役を引退した佐々木隆道氏(右)
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 ラグビー元日本代表で今季限りで現役を退き、来季からトップリーグ・キヤノンでFWコーチに就任する佐々木隆道氏(36=前日野)が、19日までにスポニチのインタビューに応じた。

 【佐々木隆道氏と一問一答】
 ―引退を決断した理由は。
 「選手として十分な準備ができなくなってきた。なるべき姿、目指すべき姿、やらないといけないレベルまで到達する準備が十分にできなくなった。その中で何とかメンバーに選んでもらい、試合に出してもらっていたが、チームを勝利に導けなかった。それは当然の結果で、自分がプレーするのが必死で、周りにいい影響を与えられなくなった。潮時かなと思い、シーズン前に決めた」

 ―引き金になった出来事はあったのか。
 「これといった出来事はなかったが、ケガが増えた。いい選手になろうとトレーニングを重ねるが、重ねるとケガをしてしまい、パフォーマンスが全然上がらなかった。選手としてはもう厳しいなという気持ちがあった」

 ―左大胸筋をケガして、復帰を目指している中でシーズンが打ち切られた。不完全燃焼という気持ちは。
 「今シーズンは毎試合、これが最後だと思ってプレーして、今まで以上に感謝の気持ちや仲間への思いをかみ締めてやっていた。終わり方はこだわってなくて、そういう思いで戦えたことの方が自分の人生では大事」

 ―引退を伝えていたのは。
 「家族くらい。自分の姿を見てきてくれていたので、そこはお互いに納得というか、“そろそろだよね”という感じだった。寂しさはあるとは言っていた。みんな受け入れてくれた」

 ―高校、大学、トップリーグで主将と日本一を経験した。
 「サントリーの主将の時はあまりいい成績ではなかったが(09年度、2位)、その時の失敗も自分の糧となっている。振り返ると、僕自身は個人として凄い選手じゃなかったと思う。そんな中でも全カテゴリーで優勝できたのは、仲間に恵まれ、指導者に恵まれ、本当にいい出会いをしたからこそ、こういう結果が生まれた。本当にみんなのおかげだなと思う」

 ―なぜ全カテゴリーで主将を任されるに至ったと思うか。
 「結構、思ったことを発言するタイプなので、自然とそうなったと思う。それが全てうまくいくわけではなくて、失敗もたくさんしたし、その中で話すタイミング、話し方、内容をアップデートしていって、成長していけたかなと思う」

 ―日本代表への思いや思い出は。
 「代表は誰もがあこがれる場所で、毎年選ばれたいと思っていたし、そのために試行錯誤して努力した。今、振り返れば通算13キャップは誇りに思うが、もっとできたとも思う。サントリーの10年間はそれ(代表入り)との戦いでもあり、なかなか結果を出せずに、毎年悩んで、考えて、努力してだった。呼ばれる時も、呼ばれない時もありましたけど、そういう10年間だった」

 ―ラグビー人生の思い出の試合は。
 「一つを挙げるのは難しい。節目、節目でいい思いをさせてもらった。やはり早稲田とトヨタ自動車の試合(06年2月、日本選手権2回戦)、W杯のオーストラリア戦(07年9月)、あとは日野が昇格した試合(18年1月、NTTドコモ戦)は印象深い。日本代表のデビュー戦(07年4月、香港戦)も夢がかない、うれしかったのを覚えている」

 ―どんな指導者を目指していくのか。
 「指導者として、可能性を広げていきたいという思いがある。まずは自分をコーチとして成長させることが第一。実力がないと、いいコーチングはできない。自分に矢印を向けて、あまり先を見ずにやっていきたい」

 ―理想の指導者像は。
 「選手を望む場所まで連れて行ってあげられるコーチになりたい。これまで教わってきた指導者は、勝利に対する意欲、意思が強い方々ばかりだったので、そういうところにこだわっていきたい。たくさんのいい指導者に恵まれたので、いいとこ取りできたらいいですけど、自分のスタイルを作っていきたいと思う」

 ―新人コーチとしてプレー経験のないチームでの就任は珍しいが。
 「他にいないのではないか。キヤノンを選んだ理由は明確で、自分自身が成長し、実力がないと生き残れない世界なので、まずは自分の成長を一番に考え、厳しい環境でチャレンジしたいという思いがあった。その中で沢木さん(敬介新監督)と一緒にやらせていただく。少し緊張しながらも、ワクワクしている。学ぶことが多いと思うからこそ、キヤノンを選んだ。そういう環境で学び続けて、いつかいいコーチになれるようにチャレンジしたい」

 ―日本ラグビー界をどう発展させていきたいか。
 「子どもたちが“ラグビー選手になりたい”と胸を張って夢を語れる、大人たちは“ラグビー選手になったら、いい未来が待っているぞ”と胸を張って言えるラグビー界にしたい。そのために、具体的に何ができるか分からないが、指導者として自分が関わる選手たちを、望むところまで連れて行ってあげたい。その繰り返しが、そういう未来につながると思う」

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