貴が「鬼」になった 相撲史に残る奇跡の勝利で土俵人生最後の賜杯

[ 2020年6月8日 05:30 ]

夏場所メモリー   武蔵丸(西横綱) 突き落とし 貴乃花(東横綱)▽優勝決定戦 貴乃花 上手投げ 武蔵丸 ( 2001年5月27日 )

2001年の夏場所千秋楽、武蔵丸(左)を上手投げで破り「鬼の形相」を見せる貴乃花
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 本割であっけなく突き落とされ、13勝2敗で並ばれた武蔵丸との決定戦。右膝のテーピングが痛々しい貴乃花が最後の力を振り絞った。突っ張ってから右四つに組み、取り直した左上手からのこん身の投げで219キロを転がした。「鬼の形相」で仁王立ち。相撲史に残る奇跡の勝利で「平成の大横綱」が22回目の優勝を果たした。

 14日目の大関・武双山戦で初黒星を喫した際に右膝を負傷した。半月板損傷の見立てで相撲は取れる状況ではなかったが、休場すれば1差の武蔵丸に優勝を明け渡すことになる。父で師匠の二子山親方(元大関・貴ノ花)の休場の勧めを「ファンのために出たい」と振り切った。まさに不撓不屈(ふとうふくつ)の精神。表彰式では当時の小泉純一郎首相から「痛みに耐えてよく頑張った。感動した」と称賛された。

 強行出場で賜杯を抱いたが、代償は大きすぎた。右膝は回復せず、7場所連続全休。復帰した02年秋場所で優勝争いを繰り広げたが、それが最後の皆勤場所だった。孤高の横綱らしく土俵人生を終えた。 

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