“ラガーマン”大野均の現役生活と第二の人生を祝し、心から乾杯

[ 2020年5月20日 10:30 ]

42歳鉄人がついに…引退を表明した大野
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 「自分が入れるかどうかではなく、日本でプレーしている一選手として尽力したい」

 昨年1月13日の秩父宮ラグビー場。9月に開幕が控えていたW杯の日本代表候補のほとんどが不在のカップ戦を終えた後、大野均はそう言った。

 おや?と思った。

 最後にジャパンのジャージーを着たのは16年6月のスコットランド戦が最後。招集を受けたのはその1年後が最後で、4度目のW杯代表選出は客観的に見て厳しい状況だった。それでも「現役を続ける以上は、ジャパンは目指すべきだし、目指さないといけない」が信条で、常々口にしてきた言葉だった。そろそろジャージーを脱ぐのでは。心境の変化を感じてから1年4カ月、大野が現役引退を発表した。

 愚直な人柄がにじみ出たプレースタイルで、長い髪を振り乱してタックルやサポートに走り回った。先発出場を終えた際は、たいてい腰に両手をやり、ゆっくりとぎこちない歩様でベンチへ戻る。さっきまでエネルギッシュにプレーしていたのがうそだったかのように、グラウンドで全てを出し切る姿が印象的だった。

 プレー以外で、その人柄を垣間見た出来事がある。15年9月1日、自身3度目のW杯に出発する前の羽田空港。搭乗口前で行われた記念撮影で、ある選手が急ぎなのか、他の選手の陰に隠れるようにスマートフォンを操作していた。隣にいたのが大野。その選手の腰にそっと手を当てると、やさしい眼差しで記念撮影への参加を無言で促した。誰も見ていないだろう、気づかないだろう、ではなく、どんな状況でも誠実、そして手を抜かない。プレーに通ずる真髄を見た思いだった。

 立場上、うまい酒もなみだ酒も数え切れないほど干してきたはずだが、大好きなお酒にまつわるエピソードは、実は本人はあまり語りたがらなかった。だからこそ印象に残る言葉もある。15年10月13日の帰国会見。「(最終戦の)試合後から(帰国の)空港まで、人生で一番おいしい酒をタダで飲めた。福岡とヨシ(藤田慶和)も飲んだ。飲めないと思っていたが、飲まないだけだった」としみじみと語った。当時はまだ大学生で、一回り以上も年の離れた福岡、藤田と一緒に酌み交わしたことが、心底うれしそうだった。

 15年W杯をともに戦い、一足早く、昨年引退した真壁伸弥さんが言っていた。「僕らはラガーマンで、今の選手たちはアスリートなんですよ。ラガーマンは酒を飲むんですけど、アスリートは飲まない」と。伊藤鐘史氏(現京産大監督)を含むロック日本人トリオは、よく練習し、こよなく酒を愛した。一番年下の真壁さんが「用意は全部、僕。けっこう面倒くさいんですよ」とぼやいていたのはご愛嬌。数少なくなったラガーマン、キンちゃんの現役生活と第二の人生を祝し、心からの乾杯を贈りたい。(阿部 令)

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