どうなる花園 FC大阪が“聖地”の指定管理者に ラグビー側は“ワンチーム”になれず

[ 2020年5月1日 05:30 ]

18年に国際規格のスタジアムに改修された花園ラグビー場
Photo By スポニチ

 花園ラグビー場を所有する大阪府東大阪市は4月10日、ラグビー場とその周辺の公園の運営委託先に、サッカーJFL「FC大阪」を含む事業者を、候補に選んだと発表した。議会の承認を経て、10月から運営が始まる。期間は2040年まで。日本ラグビー協会は複数の団体でつくる「ワンチーム花園」で手を挙げたが、2者の戦いに敗れ「次点」になった。19年W杯会場にもなった専用グラウンドを含む施設を、他の競技が運営するという極めて異例の事態。日本初のラグビー場として開場された「聖地」は今後どうなるのか。関係者に話を聞いた。

 サッカー側から見ても花園ラグビー場は、かなり魅力的な競技場だ。東大阪スタジアムと組み、指定管理者の第一候補になったFC大阪の疋田晴巳社長は「C大阪が試合をしたことがあり、サッカーの可能性があると思って以前から本拠地として考えていた。駅からのアクセスが良く、トラックがなくて観戦環境もいい」と語った。

 東大阪市を拠点にして、現在はJFLに身を置く。将来的なJ1参入のためには、各クラスごとに競技場の収容人数の条件をクリアする必要がある。J3は5000人以上、J2は1万人以上、J1は1万5000人以上が求められる。

 当面の目標であるJ3をにらみ、昨秋、第2グラウンドに5000席の寄贈を表明した。老朽化と席の少なさが問題の場所だけに、ここを多く使う高校生の「冬の花園」には朗報だ。将来的には「当面は第2が中心になると思うけど、J2まで上がれば、第1を使う選択肢しかなくなると思う」と青写真を描く。J2まで、最速2年で上がれる。

 入札ではバーベキューエリアの設置、ナイトイベントの開催、飲食店の整備などを提案。現在年62万人の公園有料施設利用者を、200万人にする計画を掲げた。目指すのは、サッカーとラグビーの共存共栄だ。「どちらも栄えていくことを念頭に置いている。全国高校ラグビーは野球で言えば甲子園と一緒で、それを開催することが大前提。トップリーグなどは、サッカーと重なることもあるだろうけど、その都度調整するだろう。自分たちはラグビーを愛する人の気持ちを踏みにじることはしない。リスペクトを持って対応したい」。花園の新しいカタチをつくっていく。


 グラウンド問題はFC大阪のJ2昇格後の話とはいえ、ラグビー側は戦々恐々だ。年末年始の全国高校大会はシーズンが重ならないものの、9~12月が旬のトップリーグと関西大学リーグは影響を受ける可能性がある。

 21年発足の新トップリーグは、各チームにホーム競技場を持つことが求められる。かつての所有者の近鉄は、本拠地使用が既定路線。中川善雄部長は「今まで通りの運営を願っています」と厳しい表情を浮かべた。他チームへの影響も大きい。大学側、関西協会の中尾晃大学委員長は「指定管理を日本協会が取って、もっと使えるようになると思っていた」と不安を募らせた。 日本協会は、サンウルブズのスポンサー、ヒト・コミュニケーションズらと組んで「ワンチーム花園」で手を上げた。関係者の話を総合すると、清宮氏が中心になり、指定管理の専門業者をブレーンにして戦ったという。

 ただ、お膝元の近鉄が当初メンバーから離脱。「ワンチーム」は一枚岩でなかった可能性がある上に、「コストがかかる提案だった」という声が伝わる。

 今後20年、花園の運営の主導権が握れないことについて、日本協会は「ラグビーの聖地としての価値が損なわれることなく、W杯の盛り上がりをしっかりとつないでいただけるものと考え、さらなる発展を願っています」と回答した。

 ラグビー界の懸念について東大阪市の担当者は「聖地の存在はなくてはならないもので、守っていくこと。花園はラグビー場。その名称が全て」と、従来通りラグビーの使用が優先されると語った。

 サッカーが運営に参画しても、“浸食”できない理由があるという。「東大阪市花園ラグビー場条例」には「使用目的がラグビー場の設置目的にそぐわないとき」は「施設の使用を許可してはならない」と明記してある。

 グラウンドの優先利用も条例で約束されている。「特別扱い」は今後も変わらず、サッカーが割って入ろうとするならば、市の許可が必要だ。それゆえ、担当者は「サッカーの人気が出たからといって、他が納得しなければ受ける話ではない」と、現在の条例が防波堤になるとした。

 ラグビー場の年間1億円以上の維持費と、プラネタリウム、美術センターなどの管理運営費が市の財政負担となっていた。今回、民間活用はそれを軽減するため。選考過程について、ある関係者は「ラグビー場だけでなく、公園一帯の活用が地域へのプラスになるかが焦点。選定者は大学教授などスポーツ分野以外も多い。ワンチーム花園は、そこへのアピールが欠けたのでは」と分析した。

 【記者の目】条例がラグビーを守っているとはいえ、FC大阪がJ2に昇格すれば、市も花園第1の使用を認めざるを得なくなるだろう。共存共栄はできるのか。ラグビーの後は芝が荒れ、サッカーが使うまでに2週間の養生を要すると聞く。東大阪市の資料では、18年度の第1の稼働率は35%と低いものの、芝の回復を考えれば、空き日にサッカーが入ればいいという簡単な話ではない。

 サッカー、ラグビー、市の溝を埋めるのも容易ではない。FC大阪の将来像について、東大阪市側は「第1を使いたいという話は聞いたことがない」と声を荒げた。花園を含む施設の運営を守れなかったのは、日本協会の落ち度とはいえ、平日にも試合が組まれるサッカーの参画は地域活性をもたらすだけに、三者が理解を深め共存の道を探ってほしい。

 日本にはラグビー専用競技場が5つしかない。サッカーと兼用競技場は多数あるが、そこは芝のダメージが大きいことからラグビーは敬遠されがちで、この聖地がなければ、小学生から大人まで悲しむ人が出てくる。W杯を機に国内が一気に盛り上がった。未来に希望を持つラガーマンやファンが、割を食わないことを願う。(ラグビー担当・倉世古 洋平)

 ◇花園でのサッカー開催 99年5月8日にC大阪がリーグ戦でホームとして使用。名古屋と対戦し、1―2で敗れた。観衆は9865人が入った。

 ▽指定管理者制度 公の施設の管理や運営を、民間事業者が代行する制度。03年9月施行。従来は地方公共団体やその外郭団体に限定していたが、多様化する住民ニーズに対応するために、民間の能力を活用して住民サービスの向上を図るために策定された。

続きを表示

この記事のフォト

「羽生結弦」特集記事

「NBA」特集記事

2020年5月1日のニュース