元啓光学園ラグビー部監督・記虎敏和氏 心一つに力合わせ―今こそワンチーム

[ 2020年4月27日 11:17 ]

啓光学園(現・常翔啓光学園)を率い、花園大会4連覇へ導いた元監督の記虎敏和氏                            
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 ニュージーランドから帰国したのは3月29日。訪問の目的の一つだったスーパーラグビーの観戦は新型コロナウイルス感染拡大の影響で同リーグが延期となり、かなわなかった。ラグビーの王国は同月26日から警戒レベルが4に引き上げられ、ロックダウン(都市封鎖)に入っている。急いで帰国した記虎敏和氏(67)の目には日本の現状が少し緩く映った。

 「ニュージーランドはスーパーでも皆が2メートルの間隔を保ち、規律をしっかり守っているように感じました。日本に帰ってくると、お店はたくさん開いているし、少しびっくりしたくらいです」

 現地では長女とその夫、孫3人が暮らしている。孫は7歳と5歳と4歳の男の子で、それぞれが楕円球に興味を抱き始めた時期だ。かつて花園を沸かせた名将が大切にしている言葉がある。『戮力一心(りくりょくいっしん)』――。それは「心を一つにし、力を合わせて物事に取り組む」という意味だ。指導者として礎にしてきた言葉は、国難ともいえる今の状況にもピタリと当てはまる。

 啓光学園(現・常翔啓光学園)を03年度の花園で54大会ぶりの3連覇へ導き、翌04年度は総監督として4連覇の偉業に尽力した。ゴールラインを背負っても固い防御で応戦したロイヤルブルーの壁のように、今は一致団結する心が大切だと説く。「自分のためだけでなく、今、自分が何をすべきか。一人ひとりの頑張り、責任を果たすことがワンチームにつながる」と言葉に力を込めた。

 04年から龍谷大ラグビー部の監督に転身し、8年間指揮を執った。枚方市教育委員会では教育委員長も務めた。16年から昨年まで女子ラグビーのPEARLSで監督も務めた。指導の根幹をなすのは「人間力を高める」ことだ。「やはり人間的な部分を高めること。それは学校や会社、国でも一緒だと思うんです」。史上初の8強入りに沸いた昨年のW杯。話題になったオフロードパスに代表されるように、自己犠牲の精神はどんな局面でも重要になる。

 法大でヘッドコーチを務める苑田右二、慶大でBKコーチを務める三井大祐ら教え子たちは中学、高校、大学とそえぞれのフィールドで指導にあたっている。まいた種は日本の各地で花が開こうとしている。それを見守るのが今の楽しみの一つだ。
 
 ○…今は四つの肩書きを持つ。三重県スポーツディレクター、三重PEARLSエグゼクティブアドバイザー、枚方ラグビースクール校長、常翔啓光学園ラグビー部OB会会長として多忙な日々を送っている。大阪屈指の強豪校だった母校の花園出場は08年度が最後。昨年の大阪府予選は合同チームとして出場するなど部員数確保もままならない現状だ。「部員が少ないながら今も頑張っている。部員数の確保に協力できれば」とロイヤルブルーの復権に思いをはせた。
 
 ◆記虎 敏和(きとら・としかず)1952年(昭27)4月28日、大阪府枚方市出身の67歳。啓光学園(現・常翔啓光学園)から天理大を経て80年から母校の体育科教員。82年からラグビー部監督に就任し、花園で優勝6回(総監督として1回)、準優勝3回。04年から龍谷大で8年間指揮を執り、16年5月から女子ラグビーの「PEARLS」で昨年まで監督を務めた。13年から枚方市教育委員会教育委員長を歴任。家族は夫人と1男2女。 

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