桃田 東京五輪で「金獲りにいく」 事故後支えてくれた激励に「恩返し」誓う

[ 2020年3月7日 05:30 ]

事故後、初めて会見する桃田(撮影・尾崎 有希)
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 1月に遠征先のマレーシアで交通事故に巻き込まれ、2月には右目の眼窩(がんか)底骨折の手術を行ったバドミントン男子シングルス世界ランク1位の桃田賢斗(25=NTT東日本)が6日、都内でチームの練習復帰に伴う会見を開いた。交通事故後、公の場で言葉を発するのは初めて。復帰時期は未定だが、順調な回復ぶりを強調。ここまで支えてくれた全ての人のために、東京五輪金メダルで恩返しすることをあえて明言した。

 堂々としていた。スーツ姿で現れた桃田は、もう顔面を隠す必要はない。衝撃が走った事故から53日。約40分、語り尽くした桃田には新たな決意があった。「誰もが注目する大会で結果を残し、いろんなことを伝えていける選手になりたい。東京五輪で金メダルを獲りにいく」。一戦必勝を掲げ、五輪でさえ「延長線上にある大会」としてきた求道者が、あえて口にした異例の金メダル宣言だった。

 1月13日の交通事故は睡眠中だった。目が覚めた瞬間には「何が起きたか分からない。凄く混乱していた」と振り返る。練習を再開した2月4日には、物が二重に見える複視の症状が発覚。保存治療とてんびんにかけつつ、メスを入れる決断を下した。

 「怖かった」「バドミントンができる体に戻るのか」「心が折れそうだった」。絶望の淵に立った。そんな時、かつて訪問した小学校の児童たちの手紙、サッカー元日本代表MF香川らアスリートからもSNSを通じて応援メッセージが届いた。実家での家族のサポートも含めて「またコートに戻った姿が見たい」。自らの存在意義を知った。桃田にとって五輪を特別な舞台にしたのは、多くの激励の言葉だった。

 回復は順調だ。「充実感がある。体の切れも戻ってきている」。複視の症状もリハビリで快方に向かっており、「今まで通りの精度で羽根を打てている」と強調。東京五輪出場を確実にしており、復帰の目標は5月16日開幕の国別団体戦トマス杯(デンマーク)となるが、今後は所属や日本代表のスタッフらと相談しながら判断する。「この時期に試合に出られないのは凄く致命的」と認めつつも「コートに立つと動きたくなる。セーブするのが課題」とはやる気持ちを抑えて、カムバックの時を待つ。

 11年には東日本大震災で拠点変更を余儀なくされ、16年には賭博問題で謹慎処分を受けた。そして今度は死者も出た不慮の事故からの完全復帰を目指す。波瀾(はらん)万丈の人生を歩むトップランカーは言う。「全てを受け入れ、力に変えるようなスケールの大きな選手になって戻ってきたい」――。再びコートに立つ姿を待つ全ての人のために。

 《7・7決着 第1シード確保へ優位変わらず》五輪出場は確実な桃田は、7月7日付の世界ランク順に決まる本大会の第1シード確保を視野に入れる。同ランクは過去1年間で獲得ポイントの高い上位10大会の合計。現在、11万1918点の首位で8万548点で2位の周天成(台湾)との差は3万1370だ。

 桃田が4月末まで試合出場を見送った場合、昨年3月の全英オープン優勝など3大会分の3万400点を失うが、現在のランクに反映されていない3大会分(2大会で優勝)の2万4450点が加算され、実際のマイナスは5950点。桃田の不在期間に周が優勝を重ねればランク1位を明け渡す可能性はあるが、実質2万5000点以上の差がある。

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