一緒に歌いませんか?SNSで広まる日本代表チームソング「ビクトリーロード」

[ 2019年10月5日 13:05 ]

リオデジャネイロ五輪3位決定戦の後、会場周辺で「上を向いて歩こう」を歌う日本代表。15人制W杯メンバーの福岡、徳永、レメキの3人(後列右3人目から左へ)が偶然にも並んで肩を組んだ
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 16年リオ五輪の幻想的な光景を今でも覚えている。3位決定戦に敗れた7人制日本代表は、観客がごった返す競技場の外で最後のミーティングをしていた。解散とともに、誰かがリズムを取るように、「パチン、パチン」と指を鳴らした。チームソング「上を向いて歩こう」の合唱が、日が沈もうとしていた空に響いた。

 大会前、メンバーはサンパウロの日本大使館に招かれた。激励会のお礼に、余興で坂本九の名曲を歌ったのが始まり。以後、練習後やバスの中で歌った。

 ブラジル入り後、まとまりに欠いていた桜のジャージーは徐々に一枚岩に。五輪ではニュージーランドを撃破した。一つになるきっかけを、歌が作った。

 W杯のまっただ中にいる福岡堅樹、レメキ・ロマノラヴァ、徳永祥尭の姿も、3年前、リオの輪の中にあった。指を鳴らしたのは確かレメキだった。

 過去に書いた話に触れたのは、今、ラグビーファンの間で、ある歌が話題になっているから。日本代表のチームソング「ビクトリーロード」を、会場やファンゾーンで歌って選手を応援しようという声が、SNS上でかなり広まっている。

 米国の70年代の名曲を日本語カバーした「カントリーロード」の替え歌で、代表の座を最後まで争ったヤマハ発動機の山本幸輝が歌詞を考えた。代表では、節目で歌ってきた。

 ラガーマン自身も広めている。山本は自ら歌う動画をツイッターに投稿。「ビクトリーロードはチームが一つになるために歌っていたものです。みんなで歌って日本が一つになりましょう」。そう呼びかけている。

 代表を目指した同志、クボタの立川理道、東芝の三上正貴もすぐさま賛同した。現役、OBを問わず、楕円球を愛する人々が、ツイッターなどで拡散をしている。きょう午後7時半キックオフのサモア戦で一緒に―と。

 スーパーラグビーの日本チーム「サンウルブズ」で起きたムーブメントも印象に残っている。16年4月、秩父宮ラグビー場に、オオカミの鳴きマネがスタジアムに響いた。「狼軍団」を指すチーム名にちなんだ「ウォーン」という声が、スクラムのたびに客席から起こった。

 ファンの自然発生だと、協会関係者に聞いた。東芝の浅原拓真は、この時のいななきをピッチで聞き「国内にラグビー文化ができてきたと思う」と喜んだ。

 今回の「ビクトリーロード」の音頭も、ファン主導だと認識している。上からの力ではなく、下からわき上がるエネルギーによって、新しい何かは作られる。

 代表選手、スタッフが一つに。桜のジャージーに届かなかった選手も一つに。ファンも一つに。そんな歌が、会場で、ファンゾーンで、街角のどこかで聞こえれば、素晴らしい光景だろう。波紋の広がりを、胸を弾ませながら見守りたい。(倉世古 洋平)

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2019年10月5日のニュース