久保修平氏、たどり着いたタッチライン 日本人5大会ぶり4人目のラグビーW杯審判団入り
ラグビーW杯日本大会9・20開幕
【W杯への鼓動】日本ラグビー協会公認A級審判の久保修平氏(38)が、アシスタントレフェリー(AR)として日本人史上4人目のW杯審判団入りを果たした。スーパーラグビー(SR)や欧州6カ国対抗、南半球のラグビーチャンピオンシップなど、数々の国際舞台で経験を積んできた第一人者の選出は、日本の悲願だった。選手同様、国を代表して大舞台に立つ同氏に、今の思いを聞いた。
「Shuhei Kubo(Japan)」。国際統括団体ワールドラグビー(WR)が5月7日にW杯のマッチオフィシャル(審判団)を発表してから約1カ月。栄に浴し、重責を負う23人の中にその名を連ねた久保氏は、本番への準備の真っただ中にいる。
「光栄です。(他の審判らから)自分たちの代表として頑張ってと言われ、身が引き締まる思い。みんなで切磋琢磨(せっさたくま)してタイミングが合って私が選ばれたと思う」
1995年に選手のプロ容認に踏み切った国際ラグビー評議会(IRB、現WR)はその5年後、パネルレフェリー制度を導入した。急速に国際試合のレベルが高まり、審判の技術向上が求められた時代。優れた審判をリストアップし、優先的にレベルの高い試合を担当させて育成。制度導入後初のW杯だった03年大会からは実力主義が明確になり、日本人審判は一人として誕生していなかった。
そんな中で16年にパネル入りし、同年にはSRでも日本人初の主審を務めた久保氏。「ゲームを吹くたびに自分の中でどんどん手応えが出てきた。17年は特に充実したシーズンだった」と振り返る。南半球一を争うラグビーチャンピオンシップでもARを務め、経験値を高めた。選手同様、こつこつと実績を積んだからこそ今がある。
一方で目指していた主審には手が届かなかった。「18年はゲームコントロール、マネジメントの部分で課題が残った」と話した通り、いくつかの試合で悔いが残ったという。「反則が続いている時や、危険なプレーへのアプローチ。そこができていなかったと思う」。昨年3月のチーフス―ブルズ戦。結果的にこの一戦を最後にSRの主審を務めていないという事実が、険しい道のりを表している。
久保氏はラグビーチャンピオンシップ(7、8月)2試合と、8月17日のブレディスロー杯(オーストラリア―ニュージーランド戦)でARを務めることが決まっている。マッチオフィシャルが一堂に会すキャンプも予定されており、本番へ向けて技量を高めていく。一方で日本代表のサポートも重要な役割。今春も東京や千葉で行われた合宿に参加し、ゲーム形式で笛を吹き、レフェリーの視点で選手に助言も行った。
「レフェリングやルールの傾向を、現場で選手と話す。いろんな選手から質問がある。ブレークダウン(密集でのボール争奪戦)は起きる反則が多いので、特に質問が多い。選手の意識が高まっているのを感じる」。15年大会では、全出場チームで最も反則の割合が少なかった日本。3勝1敗の快進撃の一因でもあっただけに、やや反則が多い傾向にある現代表の規律向上においても、果たせる役割は小さくない。
開幕まであと101日。今月中には1次リーグの担当試合も決まる見込みで、本番モードもグッと高まる。「足りない部分を19年はタッチライン際から見て感じて、次につなげられたらと思う」。42歳で迎える23年フランス大会は、ピッチで笛を吹く。大きな目標を決して諦めず、まずは101日後の開幕へと全力を尽くす。
≪実力主義、03年以降では初≫過去のW杯で主審やARを務めた日本人は3人だ。記念すべき1人目は、91年の第2回イングランド大会でARを務めた八木宏器氏で、3試合を担当した。2人目は95年の第3回南アフリカ大会の斎藤直樹氏。歴代のW杯で最多の23人の主審が選出された同大会で、斎藤氏も主審として1次リーグのオーストラリア―ルーマニア戦の笛を吹いた。続く99年の第4回ウェールズ大会では岩下真一氏がARを務めたが、その後は審判の世界でも実力主義が明確になり、03年から4大会連続で日本人審判は誕生しなかった。
≪バランス取れた計23人≫今大会のマッチオフィシャルは主審12人、AR7人、TMO(ビデオ判定員)4人の計23人。主審は12人中6人が主審初選出とフレッシュな顔触れも増えた一方で、15年大会決勝の主審を務めた47歳のオーウェンズ氏ら2人が4大会連続で選ばれるなど、バランスの取れた構成となった。日本代表目線で見れば、15年大会の南アフリカ戦で主審を務めたガルセス氏、昨年11月のイングランド戦を裁いたウィリアムズ氏らも選出。サンウルブズを含めれば、ほとんどの主審の試合を経験していることは、分析や対策面で大きなアドバンテージになる。
◆久保 修平(くぼ・しゅうへい)1981年(昭56)6月9日生まれ、福岡県大野城市出身の38歳。筑紫高1年からラグビーを始め、主にSHでプレー。川崎医療福祉大2年時に審判を開始。大阪府立八尾支援学校の教員と両立を続け、14年にプロレフェリーに転向。16年に日本人として初めてスーパーラグビーの主審を務めた。1メートル76、72キロ。家族は妻と娘2人。
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