【高野進の目】サニブラウン、追い風参考じゃなくても日本記録出た?

[ 2019年6月7日 08:30 ]

陸上 全米大学選手権第1日 ( 2019年6月5日    米テキサス州オースティン )

男子100メートル準決勝 追い風2・4メートルの参考記録で9秒96をマークしたサニブラウン
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 追い風参考での9秒96は凄い記録というわけではないが、日本人選手がこれまで9秒台を出した際の追い風は3メートル以上。あとわずかで公認記録だったと考えると価値あるタイムだったと思う。スタートに失敗し、出遅れた焦りからか顎が上がるなど力んでいたが、その力みが失速につながらずに持ちこたえた。決勝で加速がスムーズにできれば中盤から抜け出す可能性は十分ある。

 これまで全米大学選手権で日本人が活躍した例はない。全米王者が世界トップにもなっているハイレベルな大会で、全体2位での決勝進出は意味がある。9秒8台を出せる選手は見当たらず、優勝のチャンスはあるし、勝てばおのずと日本記録も出るだろう。

 ただし、怖いのはケガだ。この日もリレー、100メートル、200メートルを約1時間間隔で走った。決勝も同様の日程という。100メートルだけに絞りたいところだが、大学対抗となればそうもいかない。連続してレースをした場合はスタミナより筋肉自体の消耗が激しい。昨シーズンはケガで棒に振っただけに、気をつけてほしい。(男子400メートル日本記録保持者、92年バルセロナ五輪8位、東海大体育学部教授)

 ▽陸上の追い風参考記録 200メートルまでのトラック種目や走り幅跳び、三段跳びでは、追い風2・0メートル以下の記録を公認とし、それを超える条件下の記録は、公平性を期すために参考記録となる。国際陸上統計者協会の野口純正さんらが算出したデータによると、追い風2・0メートルで100メートルを走った場合、無風時よりも0・161秒速くなるという。同様に2・4メートルでは0・189秒速くなると試算されており、この日のサニブラウンが公認記録となる追い風2・0メートルの条件下で同様の走りをしたと仮定すれば、日本記録9秒98前後で走っていた可能性が高い。

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