海外出身者がラグビー代表になる文化 ルーツや人種違っても楕円級のもとでは一つに 

[ 2019年5月8日 06:00 ]

日本代表のリーチ・マイケル主将
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 9月20日の日本代表―ロシア代表戦(味の素スタジアム)でラグビーW杯が開幕する。月に1度、ジャパンのトピックを紹介する。外国出身者が日本代表になるラグビー特有の文化にスポットライトを当てた。

 日本代表候補の出身国は、バラエティーに富んでいる。ニュージーランド、トンガ、フィジー、南アフリカ、韓国。W杯のたびに、「日本代表になぜ外国人がいるのか」と話題になるが、条件を満たせば他国の代表になれる仕組みが、ラグビーの大きな特徴だ。

 現在の条件は、「その国・地域で生まれる」「両親か祖父母の1人がその国・地域で生まれる」「3年以上継続してその国・地域に住む」。いずれかに該当すれば代表資格を得られる。このルールの土台は、100年以上も前に作られた。

 その昔、英国は世界に広く進出し、ニュージーランドやオーストラリアに多くの人が渡った。移住先で代表になれるように、今につながるルールの基礎ができたとされている。

 現在、列強を含めて大半のチームに他国出身者がいる。ルーツや人種が異なる人間が一緒に戦う。これが100年以上続く「ラグビー文化」である。

 99年W杯で、外国出身者で初めて日本代表主将を務めたアンドリュー・マコーミックさん(52)は「君が代を試合前に聞くと、胸が熱くなった。自分の判断は間違ってなかったと思ったよ」と、流ちょうな日本語で現役時代を振り返った。

 祖父と父がニュージーランド代表という華麗なる一族に生まれた。母国代表の可能性がありながら、日本を選んだ。桜のジャージーに生活の多くをささげた。「結果を出す。その強い気持ちだけで戦った。だからW杯で勝てなかったことが悲しい」。代表への忠誠心は、今の外国出身者も同じだ。リーチ・マイケル主将(30=東芝)を筆頭に、献身的に取り組むからこそ「日本人より日本人らしい」と称えられている。

 体格で劣る日本は、多くのポジションで外国出身者の力を頼り、時にそれが批判される。しかし、出身地の違いを問うことは、この競技の性質上、ナンセンス。多様な価値観を認め合う「寛容さ」が、楕円(だえん)球に宿る基本的な精神だからだ。

 外国人労働者の受け入れ拡大で、職場や学校での国際化がより進むことが予想される。言語や人種の壁を越えて一体になるラグビー特有の文化は、そんな近未来の日本を生きるヒントになるのではないだろうか。

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2019年5月8日のニュース