目の前の1打も大事だが…森口祐子氏が後輩ママさん選手に贈ったメッセージ 

[ 2019年3月30日 10:30 ]

殿堂入りした中嶋常幸、森口祐子、小林法子、佐藤精一の各氏(左から) 
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 日本では、女子アスリートが出産後も第一線で活躍するケースは多くない。環境、制度の問題など要因は様々だが、このほど日本プロゴルフ殿堂入りした森口祐子氏は、ツアー通算41勝のうち18勝を出産後に挙げた功績を高く評価された。

 3月22日に行われた顕彰式。目標だった樋口久子氏からトロフィーを授与されると、森口氏は家族への感謝の思いを口にした。29歳だった1984年に結婚し、同年に長男を出産。翌年は日本女子オープンなど年間で5勝もした。当時は現役続行にこだわりはなかったというが、皮膚科医師の夫に背中を押され2人の子どもを育てながらママさん選手としての道を切り拓いた。「主人に“絶対にやれると思うよ”と言われなかったからやっていなかったと思う。やらせてもらえる環境があるのなら、貢献することも君の使命ではないか、と」。子育てと並行しての選手生活。練習時間も限られ、イライラも募り「30分“しか”できなかった」と怒りを爆発させたこともあった。だが「以前とベースが違うのだから、30分“しか“でなく、30分“も”できると考えられないのか」と諭され、気持ちが楽になったという。師匠・井上清次氏の厳しい指導のもと、緊張の連続だった結婚前とは違って、いつでも簡単にストップ(引退)のボタンを押せる状態。「それが集中力につながった」とも振り返る。

 子どもにも教えられることがあったという。最終日に3パットしてイライラして帰宅したときだった。笑顔で迎えにきた子どもにきつく当たった場面が今でも忘れられないという。「寂しそうにしている子どもの姿を見て、それは駄目だと気づいた」。自分の器の小ささを逆に突きつけられ、ゴルフのことは家に持ち込まないよう心がけている。

 社会の流れに沿うように、LPGAの産休制度は今後も充実していくことになるだろう。「第二の森口」を目指す後輩へ、ママさんプレーヤーのパイオニアはメッセージを送る。「復帰するにあたって体力とか練習量とか不安だらけかもしれないが、遠くを見た人生設計でもいいのでは。目の前の1打も大事だが、家族や周囲のサポートを距離感を長くして見ていることが逆に気持ちの穏やかさにつながるのでは」。2歳の長男の子守に日々頭を悩ませる52歳の心にも十分伝わる言葉だった。(黒田 健司郎)

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2019年3月30日のニュース