かませ犬部長VS小海途神の陰で~世界フィギュア紙上最大の決戦(2)

[ 2019年3月30日 17:16 ]

Originを演じる羽生結弦(撮影・小海途良幹)
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 パソコンの調子がおかしい。タッチパッドが少しの水分を検出すると、画面上の「矢印」は動かなくなり、フリーズする。以前からその傾向はあったのだが、羽生結弦(ANA)が出場したフィギュアスケート世界選手権で、僕のパソコンは固まりまくった。

 なぜか。文字通り、手に汗握っていたからだ。五輪連覇の王者にとって昨年11月のロシア杯以来、4カ月ぶりの復帰戦。ただでさえ注目度の高い氷上決戦は、日本開催でさらにボルテージが上がる。練習から僕の手は、指先は、緊張で湿っていた。とてもじゃないが、誰かと握手はできなかった。

 いまや我々の戦いのフィールドは紙面だけではない。ウェブ上にも良質の写真を、記事を、それも素早く、がテーマだ。しかも、弊社は一部ファンの間で「神」と称される小海途良幹カメラマンと、その上司で自称「かませ犬」長久保豊カメラマンを擁する。

 僕は小海途と会場ですれ違うたびに言った。「早めに、写真頼むわ」。殊勝にうなずく後輩。僕は長久保部長を見つけると、駆け寄って言った。「もしよろしければ、なるべく早く写真を送信していただけると、幸いであります」。大先輩には危険な目つきでにらまれた。手汗の量がさらに増えた。

 指先を拭き、パソコンを叱咤した約1週間。現担当のY氏と協力し、公式練習の羽生結弦を追う「練習ドキュメント」にも挑戦した。

 練習初日、一挙一動のメモを取り、それを記事化したY氏は、早くもグロッキー状態だった。細大漏らさずペンを走らせるには、高い集中力を要するのである。次の日から、僕は彼の隣にスタンバイ。彼はメモを取りつつ、内容を小さな声でつぶやくのだ。「12時20分、オーサー・コーチがプーさんのティッシュケースをフェンスに置く」。僕はそれをパソコン上に清書する。近くにいた人は「??」だったろう。

 紙上でウェブ上で、大活躍の長久保カメラマンと小海途カメラマン。2人の奮闘の陰で、我ら書き手は神々の仕事を生かし、汚さぬよう、挑むのである。スポニチの内部抗争。これからもきっと戦いは続くが、これだけは言っておく。

 「僕はかませ犬でいいっス」。
(記者コラム・杉本 亮輔)

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