貴景勝 筋量は変わらず「変わったのは脳の使い方」 トレーナーと二人三脚

[ 2019年3月30日 10:00 ]

貴景勝と食事をする伊藤トレーナー(左)
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 【新時代の大関 貴景勝を語る 下】貴景勝が初めて休場した18年春場所後、再起を目指し、関係者に紹介されたのがパーソナルトレーナーの伊藤和磨氏(42)だ。出会いから1年。新大関は自身のパフォーマンスについてあまり触れたがらなかったが、今回、若武者が急成長した裏側を伊藤氏が初めて語った。

 2人が取り組んだのは「感覚的にやってきたことの意味を言語化して、再現性を上げることにより、調子の浮き沈みをなくす」こと。かかとを擦る、まわしを叩く、塩をなめる、息を吐く、全ての行動に理由がある。「何か新しいことを教えるというよりも、今まで恩師たちから教わってきたことの科学的な根拠を説明してきた」。理屈がふに落ちると意識が高まり、体の使い方が変わる。「先生に会って、なぜそうするのかがつながった」と語る貴景勝は一気に視野が開け、前頭10枚目から1年で大関まで駆け上がった。

 伸びしろはコア=腹部だ。伊藤氏によると貴景勝のパワーは、天性の瞬発力と強い腕力に頼る部分が多くを占める。一方で、蹴る力と上半身の力の中継地点=腹部が十分に使えていない。「持っているポテンシャルの60%強で戦っている」。激しい動きの中でも、呼吸と腹圧を自在に操作できれば、軸が安定し全身のつながりが向上。立ち合いと突き押しのパワーも、さらに増すという。

 この1年、筋量は変わっていない。「変わったのは脳の使い方。運動をつかさどる脳神経のネットワークを活性化するコツをつかみ、パワーを安定的に発揮できるようになった。脳にインプットする感覚を研ぎ澄ませば、おのずとアウトプット=パフォーマンスは上がる」。体の使い方の改革は始まったばかり。横綱を目指す戦いは、もう始まっている。(特別取材班)=終わり=

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2019年3月30日のニュース