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苦しんでいた貴乃花親方 酔いつぶれても、飲まずにいられなかった理由

[ 2018年10月9日 11:15 ]

報道陣の質問に柔和な表情で答える貴乃花親方(撮影・西海健太郎)
Photo By スポニチ

 貴乃花親方が日本相撲協会から退職した。親方からの引退(退職)を表明したのは9月25日。大相撲秋場所千秋楽から2日後のことだった。弟子たちにそのことを伝えたのは当日の朝。会見では「最終的に決断したのは今朝早く」と説明した。こうと決めたら、脇目も振らずに突き進むのが貴乃花親方。彼らしい退職劇だった。

 秋場所中は報道陣の質問に丁寧に応じていた。この場所は稀勢の里が8場所連続休場から進退を懸けて土俵に上がっていた。親方は現役時代、右膝半月板損傷により7場所連続全休を強いられ、復帰場所で12勝3敗の成績を残した。自身の経験を踏まえた稀勢の里に対するコメントを求め、審判を終えた親方にぶら下がるのが担当記者の日課になっていた。「苦境を乗り越えようとしている姿がお客さんの胸を打つ」「よくやっていると思う。見てる方が苦しくなるような感じ」。親方は日々、自分の思いを言葉にしてくれた。

 元日馬富士の傷害事件が発覚した昨年九州場所からしばらく口を開かなかった親方を思えば、考えられないほど冗舌だった。今にして思えば“最後の務め”という思いがあったのかもしれない。

 最終決断は秋場所後だが、親方は夏巡業中から苦しんでいた。8月12日、46歳の誕生日。その日は大相撲の夏巡業が仙台市であった。親方は審判部の一員として巡業に同行していた。現場を訪れていた記者は「終わったら食事に行きましょう」と声を掛けられた。親方から食事に誘われるのは滅多にないこと。記者が指定された飲食店に着いたのは宴が始まって1時間ほどたってからだったが、既に親方は酔いつぶれていた。誕生日ということで飲み過ぎてしまったというわけでなく、飲まずにはいられない状況だったのだ。

 親方は3月9日に内閣府公益認定等委員会に提出した告発状について、日本相撲協会から「告発状は事実無根な理由に基づいてなされたもの」と結論づけられた文書を8月7日付で渡されていた。告発状は弟子の暴行問題が発覚したことで3月28日付で取り下げていたが、その内容に間違いはないという自負があった。自分は今後、どうするべきか――誰にも相談できずに悩んでいた頃と重なる。8月21日には巡業先の秋田で倒れた。親方はやんわり否定したが、多大なストレスが一因になっていたのではないかと推測できる。

 貴乃花親方は相撲協会から圧力をかけられたと訴えた。相撲協会は全面否定した。真実はどこにあるのか。いずれにしても、優勝22回を誇った平成の大横綱が、人生を懸けた場所と決別せざるを得なかったことが残念でならない。(スポーツ部・佐藤 博之)

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