最高の状態にあるジョセフ・ジャパン ターニングポイントとなる代表3連戦

[ 2018年6月8日 09:50 ]

ラグビー日本代表練習で指示を出すジョセフ・ヘッドコーチ(右)(撮影・ 久冨木 修)
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 ラグビー日本代表は、9日のイタリア戦を皮切りに春のテストマッチ3連戦を迎える。W杯開催年を除けば主に6月と11月に国際試合期間のあるラグビー界において、16年秋に就任したジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)にとってはジャパンを率いる4度目の期間となる。サンウルブズのマーク・ハメットHCがHC代行を務めた16年春を含めて言えるのは、日本代表は15年W杯後で最高のチーム状態にあるということだろう。

 要因は複数あるが、第一にジョセフHCをはじめとする首脳陣が、今季はほぼ同じ陣容でサンウルブズでも指揮・指導してきた点を挙げたい。元々、日本代表との連係を高めるために採用された体制だが、先週から始まった合宿でも、その効果をはっきりと見て取れる。今回の代表メンバー33人のうち、今季サンウルブズに所属している選手は30人。つまりコーチ陣も選手も大多数が2月から活動を共にしており、戦術への理解度、習熟度は高い。過去を振り返ると合宿開始当初は確認作業に追われることが多かったが、今回はそういった時間を省き、強度の高い練習でフィットネスやフィジカル強化に取り組んだ。試合に好影響をもたらすことは間違いないだろう。

 準備期間についても、今回は1週間余分に確保した。さらに合宿開始前の1週間は、主力選手に休養を与えられた。こうしたことも、過去2年はなかった。例えば昨秋は10月23日から合宿を開始し、同28日に初戦の世界選抜戦を迎えている。振り返れば昨春は初戦の7日前から、16年秋は10月下旬に2日間だけの事前合宿はあったものの、初戦のアルゼンチン戦に向けては試合週の月曜日から練習を開始したに過ぎなかった。サンウルブズも含め、敗戦の度に準備期間の短さを嘆くジョセフHCも、7日の会見では「1週間のリフレッシュを与えてから合宿を始めたので、選手も集合時からモチベーションが高く、結果を出したいという気持ちで意思統一できていた」と語ったいる。周到な準備が功を奏し、チーム状態はピークと言える。

 メンバー33人についても、7日にコンディション不良のシオネ・テアウパ(クボタ)に代わって15年W杯代表の藤田慶和(パナソニック)が追加招集されたものの、ジョセフHCの思惑通りの人選ができたと言える。これまではケガのために3、4人は招集できない選手がいたが、今回はそうしたことがなかった。サンウルブズのHCを兼ねるジョセフ氏だが、あくまで代表ファーストで選手のコンディションを管理し、出場試合数などをコントロール。そのせいでサンウルブズ側に開幕9連敗という副作用もあったことを看過するわけではないが、選手の健康状態を一元管理できた効果は大きい。

 迎え撃つイタリアは世界ランキング14位。23日に対戦するジョージアは同12位。いずれも11位の日本よりも下にランク付けされている。だが、イタリアが毎年2、3月、欧州6カ国対抗でアイルランドやイングランドといった列強にもまれていることを考えれば、簡単な相手でないことは明らかだ。それでもあえて言えば、イタリアやジョージアに勝てずして、W杯の1次リーグで当たるアイルランドやスコットランドからの勝利は見えない。チーム状態は完調と言えるだけに、3連戦の結果はジョセフジャパンの実力を正しく映し出すものとして考えていいだろう。

 5日の練習後、プロップ稲垣啓太(パナソニック)は「負けた上で『やっていることは間違ってない』とか『成長はしている』とか(言われることが)、一番好きじゃない」と言った。どんな好内容の敗戦よりも、勝利こそが選手に大きな自信をもたらすことは、15年W杯や5月のサンウルブズの連勝が証明している。飛躍か、それとも失速か。開幕まで470日を切ったW杯に向けて、3連戦がターニングポイントになることは間違いなさそうだ。(阿部 令)

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2018年6月8日のニュース