ボストンVの川内優輝、パスポート忘れや遭難寸前の過去も糧に

[ 2018年4月17日 09:50 ]

ボストンマラソンで優勝した川内優輝(AP)
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 公務員ランナーの川内優輝(31=埼玉県庁)が大快挙を成し遂げた。16日のボストン・マラソンを2時間15分58秒で制し、日本勢としては87年大会の瀬古利彦以来、31年ぶりの頂点。世界最高峰シリーズの「ワールド・マラソン・メジャーズ」の1つであるハイレベルなレースで優勝した。冷たい雨が降り続く悪コンディションで激走した。今大会がフルマラソン81回目。レースやトレーニングで、トラブルや逆境を何度も跳ね返してきた。これまでの経験を全て生かした川内は、表彰式で歓喜の涙を流した。

 ◆パスポートがない! 13年1月、エジプト国際マラソンに出場するため成田空港に姿を見せた川内だが、かつてないほどの悲壮感を漂わせていた。痛恨のパスポート忘れ。予定していたエジプト航空から、自腹でカタール航空にチェンジ。当初、自腹金額は約80万円と報じられたが、のちに本人が26万1000円だったと明かした。レースは2時間12分24秒の大会新記録で圧勝。以降、海外遠征時にパスポートを持ったか必ずチェックするようになった。

 ◆遭難寸前 14年9月、川内はあわや遭難という危機に陥っていた。奥多摩、秩父の境目付近の山中で行ったトレーニングで道に迷い、何度も崖から転落しそうになった。競技人生どころか、人生最大のピンチ。「ずっと“生きたい生きたい”と考えていた」。急斜面を登り沢も2度渡り、何とか生還。「生きていることって素晴らしい。走れるって素敵なこと」と心の底から思った川内は、これ以降、感謝の思いとともに駆けている。

 ◆大会直前に捻挫 16年12月、福岡国際マラソンの2日前に、川内は左足首を捻挫した。11月に右ふくらはぎを痛めていたことに加え、痛恨のアクシデントもレースでは奇跡的な激走。2時間9分11秒で日本人トップの3位に入った。「ホントに今回は最悪な状況でスタートラインに着いたので…。ベストを尽くせてホッとした。ホッとして、うれしくて涙が出てきた」。

 ◆極寒 今年元日、川内はボストンにいた。マーシュフィールド・ニューイヤーズデイ・マラソンに出場。零下17度にも及ぶ極寒の中、全身タイツに目出し帽で力走し、世界最多76度目の2時間20分切りとなる2時間18分59秒で優勝した。ボストン・マラソンくらいの悪天候は、川内にとっては何の問題もなかった。

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