京から明日へ。1万6000人がチャレンジ走 古都に笑顔駆け抜けた

[ 2016年2月26日 05:30 ]

仁和寺の仁王門の前で大声援を受け駆け抜けるランナーたち

 「京都マラソン2016」は21日に京都市で行われ、フルマラソン、ペア駅伝、車いす競技の3種目に国内外から1万6000人が出場した。12年に始まった大会は5回目を迎え、申込者は過去最高の6万6912人。「DO YOU KYOTO?マラソン」と「東日本大震災復興支援」をメーンコンセプトに、市民ランナーが古都を駆け抜けた。大会に特別協賛するオムロン(本社・京都市)は、社員らが選手として出場したほか、ボランティアとしても活動し、挑戦する人を応援した。(倉地 城)

 ◆「人間は、もっとやれる。」を胸にオムロングループ社員も可能性に挑戦!激走!!
 ~50歳の節目の年 娘の受験エール ドラマさまざま~
 熱いものがほおを伝わった。長かった42・195キロがついに終わる。ゴール地点の平安神宮が目に入った瞬間、上田一恵さん(50)は涙をこらえることができなかった。

 「感動、そして感謝です!」。苦しみの涙ではない。合計8の関門を気力でクリアし、5時間半を切ってゴール。「何も運動してこなかった。家族にも大反対された無謀な挑戦」と自ら明かすように、この日が初のフルマラソンだった。結果は見事に完走。ゴールに飛び込むと、再びうれし涙があふれ出た。

 「50歳という節目の年を迎えたこと、そして娘が大学受験を控えていること」が出場のきっかけだった。オムロンの京阪奈企画戦略で働き、私生活では母でもある上田さんは社員の健康増進を目的とする「GENKIプロジェクト」に参加し、2度の試走会や週末の10キロ走で本番に備えてきた。

 ヘルニアや右ひざじん帯損傷の痛みも抱えて苦しんだが「お母さん、ファイト」と娘が書き込んでくれたタイツを履き「とにかく時間内に完走すること」と粘りに粘った。試走会で一緒だった同僚の國森厚志さんが併走してアシスト。「人間は、もっとやれる。」というオムロンチャレンジ宣言の通り、自身の可能性に挑み、走り切った。

 「初めて自分の体をほめたい。新しい自分と出会えた気がします」。感動の走りは、受験に臨む娘への最高のエールにもなった。

 そんな上田さんに代表されるように、約160人のオムロングループの選手たちはそれぞれのドラマを抱えて激走した。フランス出身の社員、フルデリニエ・ベンジャミンさんはレース前日の20日が28歳の誕生日。こちらも見事に初マラソンを4時間切りで完走し「きつかったけど、気持ちよかった」と留美夫人と喜びを分かち合った。

 また、普段はロボット事業に従事する山崎竜二さん(51)は3度目の京都マラソンを3時間54分10秒で走り切り「楽しかった。京都に住んで20年、いつもの町を走れるし、応援が凄い」とサポートに感謝した。給水所ではグループ社員の「竜二さん、頑張って」という激励を受け、笑顔で応じる余裕も見せた。

 ~金閣寺、銀閣寺… 世界遺産コース 門川市長も応援~
 マラソンのスタートは午前9時。西京極陸上競技場には京都に縁のある「応援大使」として著名人がオープニングセレモニーに登場した。女子マラソンの千葉真子氏、陸上短距離の朝原宣治氏、プロ野球元阪神の桧山進次郎氏、人気子役の本田望結らが登壇し、ランナーを鼓舞。門川大作市長や、大会ゴールドパートナーのオムロン山田義仁社長らも笑顔で選手を見送った。

 前日の雨も上がり、スタート時の気温は12度まで上昇した。号砲一発、都大路に飛び出したランナーは天龍寺、仁和寺(にんなじ)、龍安寺、金閣寺、上加茂神社、下鴨神社、銀閣寺など世界文化遺産など多くの観光名所が存在するコースを駆け抜けた。

 中でも、11キロ手前にある仁和寺は序盤のハイライトとなった。シンボルの仁王門は大きく、まさに圧巻。仁和寺の僧侶は「想い出そう!復興支援の灯」の横断幕を掲げて声援した。寺の住所である「御室」(おむろ)が社名の由来であるオムロン社員による大応援団がランナーの走りを強力に後押しした。

 前回からコースに取り入れられた京都市役所前では京産大の応援団などがこん身のパフォーマンスを繰り出しランナーの士気を高めた。東山丸太町からフィニッシュまでは折り返しのないルート。自己ベストを目標に一段とギアを上げる人が目立った。

 ゴール地点では門川市長がハイタッチで出迎えた中、オムロン期待の新人、加賀美季絵さん(25)は初のフルマラソンを4時間31分49秒で完走。「最後はアップダウンが激しかったが、走れてとてもよかった」と笑みを浮かべた。学生時代はテニス部、入社後も水泳やボート、トレイルランなど活発に過ごしているだけに、運動能力の高さを見せた。同じく新人の足達大樹さん(25)は東京勤務だが、学生時代を京都で過ごしており「思い出の地を笑顔で走りたい」という熱い思いを抱え、疾走した。

 過去最高の6万6912人の申込者の中から選ばれた1万6000人のランナー、1万5000人のボランティア。震災復興への息の長い支援、走る人、応援する人、支える人それぞれが主役とする京都マラソンはますます進化していた。誰もが羨む名所巡りのコース設定、環境と復興支援への思い、そしてボランティアの「おもてなし」の心。キャッチフレーズ「京から明日へ。」を胸に、大会に関わった全ての人が笑顔で帰路についた。

 【大会応援大使の山中教授、サバンナ八木ら完走】
 大会の応援大使で京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授(53)は自己記録を10分以上縮める3時間44分42秒で完走し「タイムも更新できて最高」と笑った。お笑いコンビ「サバンナ」の八木真澄(41)はフルマラソンを完走。仁和寺通を通過する際には「今、何時?仁和寺(時)!」のギャグを繰り出した。大会応援大使で元プロ野球阪神の桧山進次郎氏(46)はペア駅伝に初出場。地元の京都出身とあって沿道から大きな声援を受けていた。

 【オムロン株式会社・日戸取締役執行役員専務に聞く】
 ~オムロンの企業理念「絶えざるチャレンジ」と共感、応援~
 国内随一の人気マラソンとなった京都マラソンの理念は「走る人、応援する人、支える人、それぞれが主役」。これにオムロンの企業理念にある「絶えざるチャレンジ」が合致し、同社は第1回大会から協賛している。初回からマラソンと同社を結びつけるべく尽力してきた日戸興史取締役執行役員専務は「今年も関わることができてうれしいです。人間に限界はない。高い目標を設定し、可能性に挑戦すること」とキーメッセージ「人間は、もっとやれる。」について熱く語った。

 【ブースも大盛況】
 レース前にはゴール地点の平安神宮に近い「みやこめっせ」でランナー受け付けが行われた。会場には多くの企業や自治体が出展。中でも、オムロンのブースは行列ができるほど盛り上がった。ヘルスケア「マッサージャ」を中心にランナーのパフォーマンスを上げる健康商品を展示し、その場で試せる体感コーナーも設置。イラストを背景に、オリジナルポスターを作成する試みも好評だった。また、今年もAED122台を提供し、救護体制も整えた。兵庫県西宮市のOL、宇野梢さん(37)は「京都らしさが感じられる大会。出展ブースも楽しい」とオムロンブースを満喫していた。

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