錦織V4!ラケットのストリング入れ替え増したコントロール

[ 2016年2月16日 05:30 ]

“ギター・トロフィー”を抱え、紙吹雪に包まれる錦織(AP)

メンフィス・オープン決勝 錦織6―4、6―4フリッツ

(2月14日 米テネシー州メンフィス)
 “ロックの王様”エルビス・プレスリーゆかりの地で、錦織が今年も王座 に君臨した。世界ランキング7位で第1シードの錦織圭(26=日清食品)は、シングルス決勝で世 界145位で18歳のテーラー・フリッツ(米国)に6―4、6―4で勝ち、大会史上初の4連覇を達 成。同一大会4連覇は現役選手では4人目となった。今季初優勝でツアー通算11勝目を挙げ、優勝賞金10万9950ドル(約1250万円)を獲得した。

 4連覇を決めるラストチューンは、最高の音を響かせ相手コートを打ち抜いた。フリッツの浮き上がった返球に、錦織はフォアに回り込んだ。跳び上がると同時にラケット一閃(いっせん)。ジャンピング・フォアハンドの「エアK」でド派手に決め、場内の盛り上がりは最高潮に達した。

 「うれしい気持ちとホッとした気持ちがある。(8強入りした)全豪からの調子を持続できて、気持ちがいい1週間だった」。終わってみれば快勝。だが試合のイントロはマイナーコードの不穏な立ち上がりだった。主催者推薦で勝ち上がってきた相手の強力なサーブ、思い切りのいいバックハンドに後退。最初の14ポイントのうち2ポイントしか取れず、いきなり3ゲームを連取された。

 8年前のツアー初優勝は、フリッツと同じ18歳の時。「自分でも思い返すことがあった」と当時の自分を重ね合わせ「思い切ってプレーするところは今の自分にはないところ」とも考えた。しかし18歳の若さと勢いはなくとも、26歳には経験と安定した強さがあった。

 「ボールが飛ばなくて浅い打球が多いというのは頭では分かっていたし、フォアを使うように意識して対処した」と徐々に転調。第5、第9ゲームをブレークしてこのセットを奪った。最近はオフの練習パートナーでもあるフリッツに対し「第2セットからは完璧なプレーができた」と格の違いを示した。

 メンフィスはブルース発祥の地であるとともに“ロックの王様”プレスリーが暮らした街。錦織には昨年に続いて優勝トロフィー代わりに老舗メーカー「ギブソン」のギターが贈られた。メンフィス・オープンの王様は、写真撮影ではギターをかき鳴らすポーズも見せてゴキゲンだった。

 ギターとテニスの共通点はストリング(弦)を用いるところ。そこに今季は変化を加えた。昨年までは縦糸にポリエステル、横糸にナチュラル(天然繊維)だった組み合わせを全豪では入れ替えていた。打感を主張するのは主に縦糸。スピンがかかりやすいポリエステルに比べると、ナチュラルは飛びが良く、打感に柔らかさも出てコントロール性能が増す。全ては攻め抜くテニスを突き詰め、より大きな大会で勝つための試みだ。

 「テニスの内容はいいのでこのテニスを続けていきたい。(よりツアーの格付けが高い)マスターズ大会でもいい結果を残したい」。縦16弦、横20弦のラケットで奏でた今季初優勝。16年シーズンのショータイムはここから幕を開ける。

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