毎年必ず出る「箱根不要論」 選手の健康を本気で考える時期に

[ 2015年12月24日 08:13 ]

今年の箱根駅伝で、山上りの5区を快走、青学大の初優勝に貢献した神野

 正月恒例の箱根駅伝が目前に迫ってきた。毎年この時期になると必ず「箱根不要論」が聞こえてくる。「駅伝練習ばかりしているから世界に通用する選手が育たない」「箱根に集中しすぎて燃え尽き症候群に陥ってしまう」など「不要論」の根拠は様々だが、とどのつまりは「箱根のせいでマラソンが弱くなった」ということだろう。

 マラソンの低迷と箱根駅伝の人気に因果関係があるかどうかはわからないが、個人的に1つだけ提案したいことがある。山上りの5区を走る回数を制限したほうがいいのではないかということだ。

 これまで「山の神」とあがめられた5区のスペシャリストは多いが、卒業後も活躍した選手はほとんどいない。05~07年大会の今井正人(順大=現トヨタ自動車九州)しかり、09~12年の柏原竜二(東洋大=現富士通)しかり。今年、3代目山の神を襲名した青学大の神野大地も2月に左大腿骨、6月に右すねを疲労骨折して苦しんだ。骨折の直接の原因はともかく、山上りダメージが影響していることは間違いないだろう。

 平地とは違い、酷寒の中で高低差860メートルもの天下の険に挑めば体に想像以上の負担が掛かる。上りはもちろんつらいが、最後の数キロが下りになっていることが更に問題で、ここで一気に足への負担が増すのだ。ダメージから完全に抜けきるには長期間の休養が必要だが、5区を走る選手はほとんどがチームの主力で、立場上いつまでも休んではいられない。無理して走り、結果足を痛める。それでも走る、また故障。そんな悪循環を3年も4年も繰り返していたら、どんなに素質がある選手でもつぶれてしまう。「昔も4年連続で5区を走った選手はいるじゃないか」という声もあるかもしれない。確かにそうだ。だが、昔と今ではタイムが違う。スピードが違う。その分、足へのダメージは比較にならない。だからこそ、本当に選手のためを思うなら、4年間のうち5区を走れるのは1回か2回までに制限すべきではないのか。そうすることで選手の負担は軽減されるし、どの選手をどの区間に配置するかの妙味も増す。

 賛否両論はあるが、高校野球もようやく選手の健康に目を向けるようになってきた。同じ人気競技の箱根も選手の健康を本気で考えるべき時に来ていると思うのだが、箱根ファン、そして箱根不要論者の皆さんの考えはいかがだろうか。(藤山 健二)

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2015年12月24日のニュース