63→75キロ2階級アップで渡利V!1日5食で減量よりつらい

[ 2015年12月24日 05:30 ]

試合終了間際に工藤(左)を逆転して優勝を決めた渡利はこん身のガッツポーズ

レスリング全日本選手権最終日

(12月23日 東京・代々木第2体育館)
 女子75キロ級で渡利璃穏(りお、24=アイシンAW)がリオデジャネイロ五輪挑戦権を勝ち取った。本来の63キロ級から2階級上げて臨み、決勝では工藤佳代子(27=自衛隊)を残り10秒で逆転して6―5で優勝。上位2人に五輪出場枠が与えられるアジア予選への出場(16年3月18~20日、カザフスタン)を決めた。女子55キロ級は吉田沙保里(33=ALSOK)、同53キロ級は登坂絵莉(22=至学館大)が優勝。今大会に出場したことで、それぞれ五輪代表に正式決定した。

 残り10秒で“リオ”の夢をつないだ。4―5で迎えた終了直前、必死の思いで工藤の足元に飛び込んだ。足をつかみ、体にかぶりつくように押し倒して逆転の2点。「ここで勝たないと五輪はないとみんなから言われていた」。終了の笛と同時に両手を突き上げ、思い切り泣いた。

 本来は63キロ級だが、6月の全日本選抜決勝で川井に敗れて9月の世界選手権代表を逃した。世界選手権が終わると、女子6階級のうち5階級で五輪代表が内定。チャンスは75キロ級しか残っていなかった。世界選手権後に家族とも相談して2階級上への挑戦を決断。体重はまだ63~65キロだった。

 食事は起床直後と就寝前も合わせた一日5食で、朝昼晩の3食は「吐きそうな120%、150%」を食べた。大きな角皿にごはんを敷き詰め、その上にカレーや焼き肉、ひじきまで、その日のおかずを全て乗っけた“渡利丼”。「体重計に乗って足りなければまたおかわりして」と寮の食堂に1人居残り、顎が疲れても1時間以上かけて胃に押し込み続けた。

 それほど必死に増やした体重も練習後は1キロ以上落ちてしまう。減量よりもつらい増量。「おなかが空かなくてごはんの時間がイヤだった」。今大会出場には1階級下のリミットである69キロ以上が必要だったが、前日計量は69・3キロでパス。練習着はワンサイズ大きくなっていた。

 75キロ級での初試合とあって「最初はうまくタックルに入れなかった」というものの、「決勝は凄く動けた」と徐々に新階級での感覚にも慣れた。「最近は食べてもおなかが空くようになった」と胃袋も大きくなってきた。「せっかく名前と同じ五輪のチャンスが巡ってきた。出場枠を獲って五輪を自分のものにしたい」。3月のアジア予選、そしてリオの舞台に立つまで。璃穏の増量生活はまだまだ終わらない。

 ◆渡利 璃穏(わたり・りお)1991年(平3)9月19日、島根県松江市生まれの24歳。7歳の時、松江レスリングクラブで競技を始め、松江第一中時代に全国優勝。高校から強豪の至学館高へ。至学館大4年時の13年、全日本選手権63キロ級で初優勝。昨年はアジア大会63キロ級で金メダルを獲得した。1メートル63。アイシンAW所属。

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