錦織の体からひずみが消えた トレーナーが明かす飛躍の秘密

[ 2014年11月18日 08:10 ]

錦織(中央)を支える(左から)マイケル・チャンコーチ、オリバーマネジャー、ダンテ・ボティーニコーチ、中尾トレーナー

 鍵はバランスにあり。男子テニスで大躍進した錦織圭(24=日清食品)は今季自己最多の68試合を戦い抜き、全米オープンでは“マラソンマン”の異名を取るなどフィジカル面で大きな向上を見せた。昨年1月から専属トレーナーを務め、錦織も「治療に関しては100%任せられる」と信頼を置く中尾公一氏(39)が肉体の変化を語った。錦織は17日に羽田空港着の航空機で帰国。17日付で発表された最新世界ランキングで前週と同じ自己最高の年間5位で今季を終え、18日に都内で会見する。

 いくつかの故障はあった錦織だが、長期離脱せずに高いレベルで戦い抜いた。中尾氏は「細かいところのバランスが良くなって体のひずみが出なくなった」と説明する。

 その一例が右足首だ。12年終盤から錦織は右足に痛みを抱えていた。十分に荷重ができず、それをかばって左足に負担がかかる悪循環。中尾氏の就任後に右足首の可動域改善に取り組み、指先でタオルをつかむ運動などをアップ時に組み入れた。悪循環が解消されると左膝の痛みが消えた。昨季欠かせなかった左膝のサポーターが今季は全く出番のなかった理由だ。

 それまで1時間程度しか費やしていなかったトレーニング時間も「少なすぎる。日本の他の選手の方がやっている」と中尾氏らに説得され、2時間近く取り組むようになった。強度も高め、大会中にもしっかりと時間を取るように変わった。

 今季の強化の重点は下半身や股関節付近。その効用は職業病ともいえる腰痛の軽減にもつながったという。「骨盤の動きがしっかりしていると腰部の負担が減る。腰部で無理をしなくても、下半身の力でねじることができる」。ただし、まだ十分ではないという。「お尻を外側に回旋する外転筋がまだ少し弱い。それをやれば上半身の安定性が高まり、より速い切り返しの動作もできるようになる」。プレーレベルが高まれば、それを受け止める一層強い筋力も必要。今季前半戦の股関節痛は、外転筋で支えきれない負荷が股関節にしわ寄せした結果だった。

 「昔テレビでやっていたスポーツマンNo・1決定戦に出ても(錦織は)勝てないと思う。特出したものはなくてトータルバランスで強い」。そこにテニスの才能が乗っかると日本最高のプレーヤーになる。来季の目標は「またツアーを完走すること。世界1位、グランドスラム優勝を目指す」と中尾氏。そのための土台は出来上がっている。

 ◆中尾 公一(なかお・こういち)1975年(昭50)3月20日、徳島県徳島市出身の39歳。01年からデビス杯のアシスタントを務め、07年からナショナルチームに同行。バスケットボールや野球、卓球にも関わり、昨年から錦織の専属に。

 ≪トレーナー複数制で連携≫錦織は複数のトレーナーを置いている。フィジカルトレーニングに関しては陸上ハンマー投げの室伏広治も指導し、シカゴに拠点を置くロビー・オオハシ氏、マイケル・チャンの現役時代も支えたケン・マツダ氏、さらにIMGアカデミーにもトレーナーがいる。中尾氏はツアーに同行してコンディショニングを担当しながら他のトレーナーと連携を取り、トレーニングを支えている。

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2014年11月18日のニュース