鼻骨骨折&右目負傷もポイント許さず…伊調“別格”V9

[ 2011年9月17日 06:00 ]

女子63キロ級で優勝し、金メダルを手に笑顔の伊調馨

レスリング世界選手権第4日 女子63キロ級

(9月15日 トルコ・イスタンブール)
 腫れ上がった右目と鼻が、激闘を物語っていた。女子で最多の45選手がエントリーした63キロ級で6試合を勝ち抜き、2年連続7度目の優勝を飾った伊調は「優勝は絶対しなくちゃいけないと思ってたのでホッとはしたけど、課題があって悔しい気持ち。試合数が多かったので省エネしちゃいました」といたずらっぽく笑った。

 厳しい組み合わせを勝ち抜いた。初戦は北京五輪銅メダルのシャリギナ(カザフスタン)戦。いきなりバッティングで鼻の軟骨を骨折するアクシデントに見舞われた。2回戦の開始前には割り箸を鼻に入れて矯正。3回戦では目を突かれ、右目の視界が狭くなった。それでも最後まで1ポイントも相手に許さず、女王の座を守りきった。

 08年北京で五輪連覇を果たした後はカナダ留学を経て、練習拠点を東京に変えた。全日本男子の合宿に参加し、全てのメニューをこなした。技術論に感銘し「今はレスリングが楽しい」。悔しい気持ちは、身につけた全ての技術を発揮できなかった“探求心”の表れでもあった。

 「とにかくロンドンではその時点でできる最高のレスリングを披露したい。私にとって、ロンドンがゴールではないと思うんで」。北京後には引退も示唆した27歳がたどり着いた、新たな境地。国内には山本、西牧と世界女王経験者が待つ黄金階級だが、伊調の強さは別格の輝きを放ちつつある。

 ≪姉・千春現役復帰?!「いつかまた私も」≫伊調の姉で、現在青森・八戸西高で教員を務める千春も休暇をとって観戦。「厳しい組み合わせだったから、決勝が一番安心して見られた」と笑顔を浮かべた。アテネ、北京と姉妹で戦ってきたが、ロンドンは断念。1人で戦いを続けている妹に「今はレスリングの話を楽しそうに話している。私は出場はしないけど、戦う気持ちは一緒」とエールを送り「いつかまた私も戦えれば」と現役復帰の希望まで口にした。

 ◆伊調 馨(いちょう・かおり)1984年(昭59)6月13日、青森県生まれの27歳。中京女大(現至学館大)出、ALSOK所属。姉の千春さんと出場した04年アテネ、08年北京両五輪で金メダル。北京五輪後にカナダ留学などで約1年間休養したが、09年に復帰。昨年の世界選手権で6度目の世界一。1メートル66。

続きを表示

2011年9月17日のニュース