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J1王者・神戸 V決定後のG大阪戦に見た「勝利への渇望」

[ 2023年12月13日 05:30 ]

12月3日、G大阪との最終戦も勝利した大迫(中央)ら神戸イレブン

 【スポニチ蹴球部コラム Footひと息】タイトルを手にしたチームの“強さ”を、改めて知った。12月3日のシーズン最終戦・G大阪戦に1―0で勝利した神戸だ。

 個人的には10年の名古屋以来となるリーグ優勝チーム担当。FW大迫勇也やDF酒井高徳を中心に、自分にも周囲へも厳しい姿勢を貫いたことが、チームの一体感を生んできたと理解していた。書いたつもりでもあった。でも、分かっていなかった。どれだけ彼らが勝利への渇望が強いかを。

 G大阪戦後。DF本多勇喜とMF井出遥也と話す時間があった。2人が口をそろえたのは、スコアレスで折り返したハーフタイムの雰囲気だった。前節の名古屋戦で優勝を決めた直後の1戦。いわば重圧のない状況でもあるが、ロッカールームはピリピリムードだったという。吉田孝行監督は試合後に「優勝した気の緩みが見えたゲームだった」と振り返ったが、ベテラン勢を中心にゲキが飛んだという。井出は「コンディション的には厳しかったけど、それでもっと走らないといけないとなった」と笑った。

 それは試合当日だけの話ではなかった。名古屋戦後は優勝祝賀会やメディア取材などチームは多忙だった。そして非日常な数日間を過ごして迎えたオフ明け、大迫らはすでにG大阪戦へ気持ちが切り替わっていたという。過酷なシーズンを戦い、報われた気持ちで安堵(あんど)しても不思議ではない。事実、10年の名古屋は優勝決定直後のFC東京戦で0―1の黒星。だが神戸は違った。

 大迫は常々こう口にしていた。「優勝が決まっても目の前の試合に負けると悔しい」。G大阪戦は大迫の個人タイトル「J1得点王」が懸かっていた1戦だったとはいえ、それは本当に副産物だったのだろう。どんな状況でも目の前の相手に勝つことを最優先にし、それを全34試合貫いた。

 長く取材していて感じるのが、プロの世界で長く生き抜いてきた選手ほどシンプルな言葉を使用するということ。「一戦、一戦」、「目の前に集中する」。メディア側からすれば、原稿化に困るありきたりな言葉なのだが、そんな地味な積み重ねこそが、大輪の花を咲かせる最短ルートでもある。それを究極に突き詰めたのが今季の神戸だったのでは…とリーグ最終戦後に思った。
 (飯間 健)

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