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“なでしこ文化”発言に思う 東京五輪を成功させるのは巨大競技場ではない

[ 2015年7月14日 13:38 ]

女子W杯カナダ大会決勝で米国に敗れ、あいさつする宮間らなでしこジャパンの選手たち

 「女子サッカーをブームではなく文化にしたい」。なでしこジャパンの宮間あやの言葉を聞いて、どこかで誰かが同じようなことを言っていたなと思い出した。

 それはソチ五輪スノーボード女子パラレル大回転銀メダリストの竹内智香(31=広島ガス)だった。今年の春先、海外遠征から帰国した空港でのこと。五輪翌年のシーズンを戦いながら、竹内は「五輪が終わって1年経って、いろんな人に忘れられかけている」と競技への関心が薄れていることに危機感を覚えていた。

 「日本でアルペン・スノーボードを知っている人といっても凄く少ない。サッカーや野球、競泳のように誰でも知っているスポーツになるにはまだまだ時間がかかる」。メダルを取っても全く十分ではなかった。一過性の盛り上がりでは叶わない競技の普及・発展や環境整備。そうした願いはマイナー競技の選手であれば誰しもが抱いているものだろう。

 今月12日、都内で武術太極拳の全日本選手権が行われていた。9月末にも決定する東京五輪の追加種目候補の1つ。女子太極拳に出場していた桐山夏帆(23=静岡県連盟)に話を聞くと「武術太極拳の知名度が上がる絶好のチャンス」と語り、「若い世代には武術として、年配の方には太極拳として、生涯現役で続けられるスポーツなんです」と競技の魅力をアピールしてくれた。武術太極拳の下馬評は決して高くはないが、それでも東京五輪にはみんな“何か”を期待せずにはいられないのだ。

 その何かとは、決して2520億円をかけた巨大な競技場の建設ではない。女子スポーツや冬季競技、五輪で実施されないものまで含めてあらゆるスポーツを、みんなが楽しみ、楽しめるようになること。そんなスポーツ文化が社会に育まれてこそ、東京五輪は成功したと言えるものになる。 (雨宮 圭吾)

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2015年7月14日のニュース