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手負いの闘莉王、魅せたノールックヒール

[ 2008年5月11日 06:00 ]

<川崎F・浦和>前半、ジャンプしてパスを出す闘莉王

 J1第12節第1日は10日、7試合が行われ、首位の浦和はアウェーで川崎Fに1―0で勝利し、首位を堅守した。6日の千葉戦で右肩じん帯を損傷したDF田中マルクス闘莉王(27)はボランチで強行先発し、後半17分、絶妙なヒールパスでPKを誘発。FWエジミウソン(25)がPKを決め、シュート3本に終わったチームを勝利に導いた。エンゲルス監督(51)就任以降は10戦不敗で着々と首位固めに入った。

【J1速報


 世界クラスの美技が、雨中の上位決戦に決着をつけた。「タカ(高原)が走ってるのが見えた。DFの間を通れば、何とかなると思った」。後半17分。闘莉王はゴールを背にしながら、相馬の縦パスを受けた。その瞬間、走る高原の姿を視界にとらえ、左足が動いた。ノールックでの絶妙ヒールパス。反応の遅れた相手DFが高原を倒し、PK奪取。勝負はついた。

 「最後の方は、頭がボーとしてきた。前半からずっと痛かった」。試合後、殊勲の闘将から出てきたのは壮絶な言葉。6日の千葉戦でじん帯を損傷した右肩の痛みは限界を超えていた。エンゲルス監督が「ウオームアップでも何かあったらやめるつもりだった」と言う、まさに強行出場。藤口社長は「彼の存在感、戦術眼は凄い。(ヒールパスは)DFのプレーではない」と感服した。

 「ユベントスか、レッズかって感じだね」。劣勢にも屈しなかった勝負強さを、イタリア屈指の強豪になぞらえたのは欧州サッカー通の相馬だ。浦和のシュートはPKを含めて3本。右肩をかばう闘莉王は90分間、1度も相手と競り合えなかった。それでもダブルボランチを組む細貝には従来と役割を入れ替え、積極的に上がるよう指示。攻撃を自重し、バランサーに“転身”した闘莉王がたった1度、前線に上がった後半17分、一気に勝負をつけてしまった。

 過熱した“挑発”も、手負いの闘莉王に火をつけるだけだった。右肩を負傷後、「打倒・闘莉王」「打倒レッズ」の文字を見ない日はなかったという。試合後は「いろんな新聞にレッズを倒したいというのが出ていた。でも、いくら外でガタガタ言っても中で結果を出すやつが勝つ」と胸を張った。見守った日本代表の岡田監督に強じんな精神力と、あふれる攻撃センスを印象づけた。

 これでエンゲルス監督の就任後は8勝2分けと不敗街道を突き進む。いまだエース高原が2得点、PKを決めたエジミウソンがようやく5得点と、内容は決して満足のいくものではない。だが闘莉王は言う。「体を張って1―0というのはレッズらしい」と。圧倒的な美技で川崎Fを制圧。次はG大阪との上位決戦第2ラウンドを制し、赤い悪魔が独走態勢に入る。

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2008年5月11日のニュース