【阪神JF】ステルナティーア95点 全兄ステルヴィオにうり二つ 柔道・阿部兄妹のような成功物語つむぐ

[ 2021年12月7日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

闘志をたたえた顔でたおやかな立ち姿のステルナティーア
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 2歳女王に輝くのはG1ホースの全兄にうり二つの立ち姿だ。鈴木康弘元調教師(77)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。「第73回阪神JF」(12日、阪神)ではステルナティーアをトップ指名した。達眼が捉えたのは18年マイルCSを制した全兄ステルヴィオを思い起こすマイラー体形と闘志をたたえた顔立ち。兄妹G1制覇の期待が膨らんだ。

 血は水よりも濃いといいます。ハンマー投げの室伏広治と由佳、ゴルフの宮里聖志、優作と藍、最近では柔道の阿部一二三と詩、カーリングの松村雄太と千秋…。いずれも同じ競技で名を成した兄妹です。競走馬ならダンスインザダークとダンスインザムード、最近ではリアルスティールとラヴズオンリーユーが全きょうだい(同じ父を持つ兄妹)でG1ホースになっています。それにしても、似れば似るもの。全きょうだいとはいえ、ここまで似ているとは…。

 阪神JFで有力視されるステルナティーア。その立ち姿を全兄ステルヴィオ(マイルCS優勝)と重ね合わせたのは私だけではないでしょう。440キロ台の馬体重以上に大きく見せる肩、胸前の筋肉と太い尾。全兄も体重(2、3歳時は460キロ前後)以上に肩と胸前の筋肉量が豊富で、たくましい尾を持っていました。ロードカナロア産駒らしい体のつくりに遊びが少ないマイラー体形も共通しています。何よりも似ているのは闘志をたたえた顔と、その顔つきとは不釣り合いな、たおやかな立ち姿です。

 引き手を遊ばせながら少しだけ前肢に負重をかける理想的なバランスで立っています。2歳牝馬らしからぬ落ち着いた物腰。兄の立ち姿もそうでした。ところが、顔を見ると、強い目力、耳をきつく立てながら、鼻先にも力を入れています。兄も顔に闘争心をにじませていました。“動”の顔つきと“静”の立ち方。そんな気性を映し出す姿まで同じなのです。

 ただし、顔の美しさは妹に軍配が上がります。愛くるしい目とスッキリした鼻りょう。美女顔です。その割にアゴっぱりがいい。良く食べるのでしょう。だからこそ、兄にも見劣りしない張りをたたえているのです。健康美人。アスリートになぞらえれば…。いや、顔の造形を女性に例えては失礼なのでやめておきましょう。

 ともあれ、G1ホースの全兄ステルヴィオと重なる姿は前途洋々たる未来を伝えてくれます。毛ヅヤは抜群。体調もかなり良さそうです。朝日杯FSで2着だった全兄と同等、いや、それ以上の期待をかけられるG1候補です。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の77歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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2021年12月7日のニュース