小栗旬40歳 舞台「ジョン王」初日が誕生日“望外”の俳優人生「もう少し渋い人間に」今年の漢字は「悪」

[ 2022年12月25日 10:00 ]

5年ぶりの舞台「ジョン王」に主演する小栗旬。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の撮影終了後、初の作品となる
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 俳優の小栗旬(39)が今月26日に開幕する舞台「ジョン王」に主演し、5年ぶりの舞台に挑む。18日に衝撃的な最終回を迎えたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)の主人公・北条義時役を勤め上げた後、初の作品となる。シェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指してきた「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の“真の完結作”となる注目の歴史劇。稽古中の小栗に手応えを聞いた。

 今シリーズは彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督・蜷川幸雄氏の下、シェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指し、1998年1月に第1弾「ロミオとジュリエット」からスタート。今回の「ジョン王」は第36弾として2020年6月に上演予定だったが、コロナ禍のため中止。21年5月に最後の第37弾「終わりよければすべてよし」が上演され、いったんシリーズ完結を迎えた。

 しかし「ジョン王」を上演しないことにはシリーズは終われない。蜷川氏から2代目芸術監督を引き継いだ吉田鋼太郎の強い思いから、仕切り直しの上演が決定した。

 小栗の舞台出演は17年のミュージカル「ヤングフランケンシュタイン」以来、5年ぶり。「彩の国シェイクスピア・シリーズ」出演は06年の第15弾「間違いの喜劇」以来、実に16年ぶり4作目となる。「ジョン王」は現在、最も上演機会の少ないシェイクスピア作品とされる。

 イングランド王ジョンの下へ、先王リチャード1世の私生児だと名乗る口の達者な男が現れる。ジョンの母エリナー皇太后はその私生児フィリップ・ザ・バスタードを親族と認め、従えることを決める。そこへフランス王フィリップ2世からの使者がやってくる。ジョンは正当な王位継承者である幼きアーサーに代わってイングランド王となっていたが、「王位をアーサーに譲り、領地を引き渡すよう」に要求しにきたのだ。それを拒んだジョン王は、私生児を従えてフランスと戦うために挙兵する。まんまと王族の仲間入りをした私生児は、権力者たちの愚かな振る舞いを鼻で笑いながらも、戦争へと巻き込まれる。権力者の思惑に振り回され、世界は混迷を極めていく…。

 地味な上に「つまらない」とまで言われることもある「ジョン王」だが、私生児役の小栗自身も「戯曲だけ読んでいると、何をどう面白がっていいのか本当に分からない作品」と感想。それが自身初の吉田演出を受け「僕の演じる役が劇中の世界と客席をつなげる役割を担っていて、戦争というものがこれほどまでに人の人生を変えてしまうのかということを、観客の皆さんにより近い形で、実感を持って受け取っていただけるのかな、と。稽古を重ねてきて、作品の輪郭の一辺が見えてきました」と戦火が続く現在にも通じるテーマを説明した。

 常軌を逸した混沌の世界が描かれるため「ここまでエネルギーのある芝居は、最近なかなか見られないんじゃないですかね。(メガ盛りの)『ラーメン二郎』みたいな舞台だと思います(笑)。(トッピング)“全部乗せ”でコテコテなのに、もう一度食べたくなるような」とユーモアたっぷりにアピールした。

 12月26日、舞台初日と節目の40歳の誕生日が奇しくも重なった。近年、誕生日は1年の締めくくりとして外食を堪能していたというが「毎年1回の楽しみだったんですけど、今年は残念ながら食べに行けません。悪意のある誕生日プレゼントを(舞台製作の)ホリプロさんから頂きました(笑)」とジョークが冴え渡った。

 「最初は12月27日が初日と聞いていたんですけど、いつの間にか26日に変更になって。鋼太郎さんも『どっちでもいいなら、小栗の誕生日から始めようぜ』とおっしゃったのかもしれませんが、余計なお世話だなと思っています(笑)。27日が初日でも、26日はゲネプロなので、どちらにしても(外食には)行けないんですけどね。大河ドラマが終わってすぐの40歳の誕生日が、鋼太郎さんと一緒の舞台初日と重なるなんて、なかなかない凄いタイミングだと思います」

 「鎌倉殿の13人」のクランクアップ取材。40代の展望を尋ねると「特に何も考えていないんですよね。本当は休みたかったんですが、鋼太郎さんから中止になった舞台(ジョン王)に誘われて、正直、面倒くさいと思っています(笑)」と冗談めかしながら「舞台が終わったら、本当の意味で自分の今後を考える時間を1回つくらなければ、とは思っています」とした。ならば、若かりし頃に思い描いた40歳には近づけたのか。

 「変な話、俳優・小栗旬の人生としては、だいぶ上出来だと思います。こんなにも色々な仕事に恵まれて、40歳を迎えるなんて、想像もしていませんでした」。今年5月に放送されたNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀 小栗旬スペシャル」でも、1998年の関西テレビ・フジテレビ系「GTO」から02年の日本テレビ「ごくせん」を経て、05年のTBS「花より男子」で脚光を浴びるまでの苦労の一端が明かされた。

 「でも、人間・小栗旬の人生としては、もう少し深みのある渋い40歳になっている予定だったんですけど(笑)。もう10代の頃から精神構造が何も変わっていないので。そこに関しては、悲しみを抱いています(笑)」と自虐を連発して笑いを誘い、今回の稽古場のひとコマを明かした。

 「11歳になった子役で佐藤(凌)君っていう男の子がいるんですけど、11歳の目標を聞かれて『だらしなさを直したい』って。僕もまさにそれです(笑)」

 30代ラストイヤーは“大河漬け”から休む間もなく演劇と芝居一色の日々。最後に今年の漢字1文字を尋ねると、少し思案し「『悪』ですかね」と明かした。

 「後半はダークヒーローになった義時を最後まで演じ切って、完結できたことが自分にとっては非常に大きかった1年。『義』や『時』の字もありますけど、やっぱりいい意味の『悪』ですかね。“全部小栗のせい”と嫌われたり、率直な評価を頂けたのは役者冥利に尽きますし、いい意味で『悪』というものを視聴者の皆さんに愛していただけたのかもしれません。そうなると、この1文字しかないですよね」

 ◇「ジョン王」公演日程(東京公演は他都市の公演と出演者・配役が一部異なる)
 <東京公演>2022年12月26日(月)~2023年1月22日(日)Bunkamuraシアターコクーン
 <愛知公演>2023年1月26日(木)~29日(日)御園座
 <大阪公演>2023年2月3日(金)~12日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
 <埼玉公演>2023年2月17日(金)~24日(金)埼玉会館大ホール

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